没後50年たっても「20世紀最高のリーダー」として不動の地位を得ているウィンストン・チャーチル。第二次世界大戦を勝利に導いた立役者であり、福祉国家の礎を築いた功労者でもある。言葉を巧みにあやつる演説の名手であり、ノーベル文学賞をとるほどの文才もあった。ずばぬけた行動力、決断力、交渉力、胆力、創造力、そして愛嬌……巨人を巨人たらしめた「本質」について迫った『チャーチル・ファクター』はイギリスで発売と同時にベストセラーになった。著者はイギリスで国民的人気のある政治家、ボリス・ジョンソン現ロンドン市長。現在、20カ国語で翻訳されているこの本の日本語版出版にあたって寄せられたレビューをシリーズで紹介する。

次期宰相の座に近いロンドン市長

移動中の機内で、滞在先までのバス車内で、夕食後に布団の中で、眠い目をこすって。献本頂いた本に魅了され、一気に完読したのは久しぶりのことだった。ここまで本書に夢中になった理由は、このところ、自分がよりよきリーダーになるための本を探していること、対象が歴史上最も優れた指導者とされるウィンストン・チャーチルであったことに加えて、著者がいま英国でもっとも人気があり、次期宰相の座に近いとされる、ボリス・ジョンソン(現ロンドン市長)だったから。

『チャーチル・ファクター』(ボリス・ジョンソン著・プレジデント社刊)

本書に近いのは、リチャード・ニクソンによる『指導者とは』。チャーチル、シャルルドゴール、フルシチョフ、マッカーサー、周恩来など、同氏が大統領として直に接した、世界の指導者たちの素顔が描かれていた。

ボリス・ジョンソンは特異な政治家である。人前に出る時はわざと髪の毛をボサボサにして、ぶつぶつ英国らしいウィットを交えて、面白おかしく政治を語る。2013年のことだったか、ダボス若手グループのイベントで彼の話を少人数で聞いたことがあるが、とにかく笑いがとまらず、引き込まれたことを覚えている。日本で例えるならば、橋下徹とビートたけしを足して2で割ったような感じか。それでいて、彼はイートン校、オックスフォード大出身の超エリートだったりする。

最近ジョンソン氏に注目が集まったのは、6月に予定されている英国のEU脱退(“Brexit”)に関する国民投票にあたって、キャメロン首相が圧倒的に国民に人気のあるボリスに大臣ポストを用意して協力を要請したが断り、逆にEU脱退のキャンペーンを進めているというニュースだった。いよいよ、首相の座を目指して本格的に動かした感がある。