ネット上のクチコミマーケティングを即効薬と誤解している人が多い。まず、クチコミのほとんどは直接人が人を介す「リアル」が占める。最近当社が行った調査では、ネット上でのクチコミ行動は20%にも満たない。もう一つ、クチコミは企業側が「意図的に広げられる」という錯覚もそうだ。ツイッターを宣伝に活用する企業が増えているが、押さえるポイントを間違えるとマーケティングの本質を見誤る。

クチコミは本来、自然発生的におこるものだ。広告に限らず、店頭、顧客サポート……と、企業が消費者とコンタクトを持つすべての部分に関係すると捉えるべきである。人為的にクチコミをおこそう、という考えはナンセンス。「マーケティング」の意味を宣伝という狭い意味で考えるから間違える。

自然発生的なクチコミとはどんなものか。大きくは2つに分類できる。1つはメディアで取り上げられることの反響だ。バナナダイエットのように効果を実感するかどうかは別にして、ウワサレベルの話に人が飛びつくケース。もう1つは実際に体験した話が伝播していくこと。これらはまったくの別もので、メディアの「ネタ」としての強さと、実体験を伴ったレビューは大きく異なる。後者のほうが情報としての質が高いのはおわかりだろう。消費者にとっては生々しいバイアスのかかった主観だが、消費者の意見は集めて対比させればおおむね客観的だ。

これを企業が仕掛けて語らせると、クチコミの総量は増えてもその質が下がり、情報の価値を下げることになる。

まず取り組むべきは「リスニング」だ。オンラインのクチコミを分析することで、そもそも自社や製品がどう思われているのか氷山の一角という前提で把握する。これが広義のマーケティングの第一歩。ネットのクチコミ分析をツールとして使わない手はない。

クチコミは、知って終わりではない。実際にどう改善につなげるかが重要だ。取るべき改善を見越して仮説を立て、そのうえで「聞く」ことが重要となる。一から始めると、最初は持ち出しばかりで、効果も見えづらいが、トップがイニシアティブを取るべきだろう。

始めるならスモールスタートがいい。小さな改善に取り組み、小さな成果を出すことから第一歩を踏み出そう。

(プレジデント編集部=構成)