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小売業界で先行した賃金アップ

13年春の賃上げ額は前年比でわずか月額74円(連合の5月8日時点の集計=3143組合)。デフレ脱却を掲げる安倍晋三首相の経済界への異例の賃上げ要請で小売業を中心に賃上げ報道が相次いだ。だが、いざ蓋を開けてみれば、ただの空騒ぎだったわけだ。

月額74円だと年間で900円弱。リフレ効果は皆無に等しい。原因は賃上げを要求しなかった労組側にもある。賃上げは毎年自動的に昇給する定期昇給(定昇)と、そこに上乗せするベースアップ(ベア)で構成される。賃上げの牽引役であるトヨタ自動車の労組をはじめ大手自動車労組や電機労組が4年連続でベアの要求を見送ったほか、NTT労組など大手労組も軒並みベアを要求しなかった。

なぜか。依然、デフレ下にあることが最大の理由である。1955年から75年の高度成長、75年から90年代初頭の低成長時代の春闘の賃上げでは「定昇相当分+物価上昇率分+生活向上分(純ベア)」の要求方式が定番だった。物価上昇が賃上げを牽引し、当時は前年比10%、15%増の高い賃上げを獲得してきた。ところが90年代後半以降、デフレに突入し、賃上げの根拠を失ったのだ。

今年度の各産業別組合の賃上げ結果は惨憺たるものだ。電機の大手労組で構成する電機連合の賃上げ率はマイナス0.22%と下がっている。シャープとパイオニア労組が春闘から離脱したほか、NECが4月から9カ月間一律4%を減額した。さらにパナソニックや富士通の賃下げなど、業績不振が大きく響いている。

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不戦敗だった!? 主要企業の賃金改善要求

小売業など流通業が主体のUAゼンセン傘下のセブン&アイ・ホールディングスはイトーヨーカ堂、そごう・西武などグループ企業54社のベアを実施。ヨーカ堂の賃上げ幅(41歳、組合員平均)は定昇4322円(1.24%)、ベア907円(0.26%)の計5229円(1.5%)。09年以来の4年ぶりのベア実施だったが、全体は昨年とほぼ同率である。