これは特定の時代、特定の個人にだけ通用した特殊事情のように思えるかもしれないが、基本構造は常に同じである。お金が欲しければ、お金を追わないことだ。
なぜなら、お金とは「影」にすぎない。影を得るには、影ではなく実体を追うことが先である。それには自分を高めるしかない。つまり日々の自己研鑽だ。
自分を磨けば、そこに実体ができる。実体ができれば、あとは光が差すかどうかである。
光は時の運だから、常に差すとはかぎらない。だが、極端にいえば、南極大陸でも1年中1回も日が差さなかったことは、地球が始まって以来なかったことだ。いつかは光が差す。実体があれば、欲しくないといっても影はできるのだ。
自己研鑽とは、勉強をして資格をとることだと誤解している人もいる。それは大きな間違いだ。資格とは単なる許可証にすぎず、大事なことは、知的好奇心を高めることだ。
知的好奇心のない人は、資格を手に入れたとしても、つまらない弁護士やつまらない医者になるだけだ。人が人を引きつけるのは、教養が発する知的な魅力である。そのことを忘れるべきではないだろう。
1945年、兵庫県出身。69年東京大学法学部卒業後、読売新聞社入社。73年三菱商事へ入社。80年ハーバード大学経営大学院にてMBA取得。81年ボストンコンサルティンググループ入社。89年同社社長に就任。2000年、同社を退職し、ドリームインキュベータ(DI)を設立。06年から同社会長に就任し、現在にいたる。