どういう手法を使ったのか。

こういうとキザに聞こえるかもしれないが、私のほうから年俸アップを要求したことは一度もない。あれよあれよという間に報酬が増えてしまった、というのが実感だ。

「こんなにもらっていいんですか?」

当時のCEOに尋ねたことがある。相手はこう答えた。

「You deserve it」

つまり「君にはそれだけの値打ちがある」というのである。

当時、私のコンサルティング技術はワールドクラスであると評価されていた。世界中、どこへ行っても通用するということだ。しかし、それだけでは世界で3番目の高給取りにはなれない。

戦略コンサルタントとして大成するには、3つの力が必要だ。まずは「コンサルティング技術」、そして、さまざまな国の人と心を通わせることのできる「言語力」。もう1つは、いかなる相手とも交渉して「信頼を得る力」である。

コンサルタントにとって、コンサルティングに関する技能が必要なのはいうまでもない。言語力が大切なのは、顧客と同じ目線と言語で話せなければ、心と心を通じ合わせることができないからだ。そして、短期間のうちに顧客と深い信頼を築く能力は、戦略コンサルタントには不可欠といっていい。

私たちコンサルタントの仕事は、経営戦略の改革・大転換が必要なときに、その青写真を描き、現に実行させるということだ。

しかし、改革には当然ながら痛みがつきもので、顧客が痛みを避けたいと願うのも当たり前。顧客が「避けたい」ことでもやらなければいけないとしたら、そこで不可欠なのは、コンサルタントへの信頼だ。

病気治療と同じである。「この人の言っていることは間違いない」「その通りに実行すればきっとよくなる」という信頼感を持ってもらえなければ、血を流すような大改革には踏み込めない。