天下の三菱UFJ銀行で起きるなら、他では…
A氏が玉川支店を訪れて貸金庫の中身を確認した12月16日は、奇しくも三菱UFJ銀行の半沢淳一頭取が記者会見を行った日でもある。そのため、銀行が発表した「約60人の被害者」にA氏は入っていないだろう。
今回の問題が発覚したのは、「貸金庫の中身が違っている」という顧客からの相談があった今年10月。そして、11月14日付で元行員を懲戒解雇してから、A氏ら被害の可能性がある貸金庫利用者に確認作業をし、12月16日に銀行トップが記者会見するまでに約1カ月が経過している。こうした三菱UFJ銀行の対応について、A氏はこう話す。
「日本は世界で最もカントリーリスクの低い国です。だとしても、日本にあるトップオブトップの銀行としてあるまじき対応です。史上最悪のリスクコントロールといってもいいでしょう。天下の三菱ですよ? 超一流の対応を見せるべきでした。
言い換えれば、日本のトップ銀行でこんな事件が起きているということは、他の銀行でも同じようなことが起きている可能性が非常に高いということです。今、全国の銀行は大騒ぎですよ。貸金庫を持っているところはとくに。契約者本人が確認できないケースも多いでしょう。大混乱ですよ」
確実に盗まれたと証明するのは難しい
A氏に窃盗の被害届について聞いてみた。すると「被害届は出すつもりはない」という。
「もう無駄な時間を使いたくないんです。中に何が入っていたのか、確実な証明が難しいということもあります。警察に被害届を出したところで、警察が補償してくれるわけでもないし、時間ばかり取られます。
銀行に責任ある対応をしていただきたいですが……盗まれたものは先祖代々から伝わる、お金を出しても買えないものです。もう2度と手に入らない。もちろんすでに売り飛ばされていると思いますけど」
公表されている情報によると、盗んだ元女性行員は動機について「私的な資金に流用するためだった」と話しているという。この元行員が玉川支店に異動になったのは今年10月のこと。つまり異動して間もない時期にA氏の貸金庫から盗んでいることになる。
もし貸金庫を利用している方々がいたら、今すぐ中身を確認しに行くことをお勧めしたい。