「高市首相」就任で危惧されたこと

しかし、最終的には石破氏に惜敗することになる。その理由を考えると、いまの高市氏に足りない点が見えてくる。

高市氏の支持者たちによる岸田首相(当時)への罵詈雑言は、高市氏が閣僚だっただけに目に余るものがあったし、高市氏自身が自公協力の重要性を訴えているのに、支持者が公明党を誹謗中傷することもあった。

高市氏の周囲の空気に流されない率直な言動は、彼女の魅力でもあるが、首相ともなれば、中国などと紛争を起こしかねないし、連立相手の公明党を困らせる懸念がある。高市氏自身、首相になれば極端な政策はしないだろうが、支持勢力が首相就任前の約束の実行を求めて高市氏の足を引っ張ることも危惧された。

さらに対米外交でも、たとえば戦争責任を巡る過去の言動が掘り起こされた場合、米国で民主党政権が続いていたらかなりの不安材料になっただろう。

“暴走”が目立つ高市氏の支持者たち

石破首相誕生後については、「幹事長以外は受けない」と総務会長の椅子を蹴って下野した。しかし、衆院選を直後に控えた時期だったから、閣僚人事や公認などで公平に扱うことを条件に受けるべきだっただろう。高市氏の推薦人に「裏金問題」で指摘された議員が多いことなども考えれば、幹事長就任はありえなかった。

その後の衆院選中には、総裁選の敗北を引きずった高市氏の支持者が、石破氏を支持した自民党候補には投票しないよう呼びかけることも多かった。高市氏はさっそく公式Xで諫めたが、これらの動きを止めるためにもう一工夫あってしかるべきだった。

私は、石破氏と高市氏が手を取り合って有権者の前に出るべきだと提案したし、そういう動きもあったようだ。少なくとも高市氏から断ったわけではない。だが、衆院選で自民党が敗北した原因のひとつは、党内の結束が弱かったことで、石破氏と高市氏の双方に責任があるような印象を受けた。