国連がローマ教皇やダライ・ラマ法王を問題視しない理由

まず一般論として、条約と国内法のどちらが優位に立つのかを整理しておく必要がある。今回の勧告は女性差別撤廃条約を根拠とするからだ。

一部に、ローマ教皇やダライ・ラマ法王がみな男性なのにそれは問題視しないで、日本の天皇の男系男子限定だけを女性差別とするのはフェアでない、といった意見もあったらしい。しかし、ローマ教皇を首長とするバチカン市国やダライ・ラマ法王が率いるチベット亡命政府は、国連に加盟していないし、もちろんこの条約も締結していない。だから、そもそも委員会の勧告対象ではないという、初歩的な事実を見落とした主張だ。

通説的な理解では、条約は国内の普通の法律より優越し、最高法規である憲法との関係では限られた例外(確立された国際法規や一国の安危に関わる降伏文書・平和条約など)を除き、憲法が優越すると考えられている。

これを当てはめるとどうなるか。

選択的夫婦別姓と同列には論じられない

選択的夫婦別姓の導入は、一般の法律である民法の改正によって可能になる。だから条約を前提とする限り、勧告の趣旨に沿う方向で民法を改正するのが筋だろう。

皇位継承資格の男系男子限定も、法律である皇室典範に定めるルールなので、同じように勧告に従うのが当然のようにも見える。

ただし、「皇位継承」は天皇の地位そのものの在り方に関わるテーマであり、そのことに関連して法律の中で皇室典範だけが、例外的に憲法によって“名指し”で委任されている事実も見逃せない。

憲法は、天皇の地位を「主権の存する日本国民の総意に基く」とする。これは、天皇の地位が日本国民の意思“以外”のものによって左右されるべきでない、とする憲法の要請を意味する。

そうであれば憲法上、天皇の地位に直接かかわる制度については、選択的夫婦別姓と同じようには扱えないだろう。

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