つきつめて考えれば「空」の世界には「こうしなければならない」という基準はありません。しかし、ノルマに追われ「やらなければ」という思いにとらわれてしまうと、さらにノルマが重くのしかかってきて苦しくなります。

この金縛り状態から解放されるには、原点に戻り「目の前のことを全力でやる」ことです。行き詰まりを感じたときほど、一歩引くよりむしろ一歩前に突っ込んでいく。「やらねば」と持て余していた対象にあえてドカーンとぶつかっていくのです。対象と一体になることで、辛いとか苦しいという思いが消え、新たな道が開ける。つまり「無心」になって取り組むことが停滞期を乗り切るための智慧なのです。

「捨てていけば、すべて満ちたり」。これが私の哲学です。以前、私は小学校から大学までの卒業証書をすべて捨ててしまったことがあります。それだけでなく、今まで趣味のように取得してきた数々のライセンスについても、証書をほとんど処分しました。たいていの人は口を開けて驚きますが、証書を「えいやー」と思い切って捨てることで学歴や肩書といった執着から離れ、前に進みたいと思ったからです。これは私流のやり方ですが、執着から離れるにはカタチのある身の回りのものから捨てていくのも一つの方法です。小さなモノサシを手放し、有にも無にもとらわれず、無限に広がる空の世界に生きることは、実に快適です。

(松田健一、平地 勲=撮影)