大学まで無償の教育を全ての子どもと人に保証

日本は、教育費の公的支出がOECD諸国の中で、毎年最低か最低レベルである。OECDによると、各国が教育に投資する理由は、それが経済成長を促し、生産力を高め、人と社会の発達に貢献し、不平等を減らすから。日本の教育費の少なさは、こうした側面からも疑問を感じさせるのである。

日本では、教育費が高いので進学をあきらめる子どもも多い。最近は、自治体が授業料を無償化する話を聞くようになった。例えば東京都は2024年度から「授業料無償化」を始めるという。しかし、高校、都立大学、私立中学などで条件が異なっていて複雑だ。

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つまり、平等の原則はなく条件付きの「授業料無償化」である。また、日本では入学金や制服費、修学旅行費など授業料以外の支出が多いので、実際にどれだけ負担が緩和されるかは疑問のようだ。

また、「授業料無償化」の制度自体が複雑でわかりにくい上、申請する必要がある。フィンランドでは、大学まで無償の教育が全ての子どもと人に保証されていて、申請する必要がないので楽だ。さらに、無償化の目的も異なる。

東京都の「授業料無償化」は少子化対策として発案されているが、フィンランドの教育費無償は少子化対策という行政の狙いによって発案されたのではない。前述したように、全ての子どもに対する社会保障とウェルビーイングを目的として始められたものだ。

生徒9人に対し先生1人

フィンランドではクラスのサイズが小さく、小学校から高校まで20~25人程度が普通だ。小中学校では1クラスに先生が2人、アシスタントが1人程度ついて、さらに小さなグループに分けて教えることが多い。

クラスには読書障がいがある、算数が苦手、外国出身でフィンランド語があまりできない等、さまざまな子どもがいる。どういうニーズがあるか、支援が必要かなど一人ひとりについて、親の意見も聞きながら教育計画を作る。

そうして、きめ細かい学習支援がされている。こうした支援は「学習のケア」とも呼ばれ、小学1年生から提供される。

2019年のOECDの報告によると、フィンランドでは、生徒1人あたりの先生の数が特に中学で多く、生徒9人に対し先生1人である。OECD諸国平均では13人なので、その中でも少ない方だ。

一方、2020年のOECDの報告で、日本の公立小中学校では1学級あたりの生徒数は、最多である。

日本の都市部では、少子化によって1クラスの人数は減っているが、制度としては40人学級が続いてきた。最近は、小学校で1クラス35人が段階的に目指され、実現しつつあるようだが、それでも多すぎだろう。

また、中学では依然として、40人以下が標準とされている。

ペダゴジーが重視されていることも日本との違いだ。ペダゴジーは教え方の方法や方法論を指し、それ自体が進化を続ける学問分野でもある。フィンランドでは、小学校の先生になるには大学でのペダゴジー履修が求められている。

子どもの教育は誰にでもできることではなく、しっかりした方法論の知識が必要なためだ。オンライン教科書とそれを使う授業もペダゴジーの一つである。