恋愛が存在しない結婚だからこそ

外側から見れば、一般の結婚となんら変わらない夫婦のありようだが、「恋愛」が存在しない友情結婚には、「好きな人の子どもが欲しい」、「好きな人と自分の子どもだから、愛おしい」などという、恋愛結婚の大前提は存在しない。だからこそ、と中村さんは思う。

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「恋愛感情のない相手との子どもを、わざわざ妊活して産んで育てるということは、相当『子ども好き』でないとできないことです。だから、友情結婚の子どもはものすごく幸せだと思う。両親ともに子どもが好きで、子どもが欲しいから、人生をかけてここまでの選択をしているわけですから」

恋愛や結婚生活の中で、残念ながら思わぬ形での望まない妊娠はあり得る。でも友情結婚では夫婦同意のもとで妊活を経て妊娠出産へと至るので、「カラーズ」で誕生した夫婦間の子どもは、人生の全てを賭けてでも、会いたかった存在なのだ。

「友情結婚への批判に、『そこまでして、結婚しなくて良くない?』とかありますが、『そこまで』って何? って、思います。皆さん、子どもが欲しくて、その子どもをあたたかな家庭で育てていくために、結婚という手段を選んでいるのです。『性行為がないって、出生率、下げない?』という批判にも、いや、友情結婚ができたおかげでもともと出産を考えていなかった人が出産されているので出生率は上がっています、と」

性行為や恋愛への呪縛

カラーズは入会希望者全員に、必ず会って話を聞くことを鉄則としているが、なかには「入会NG」、要するに断らざるを得ない人もいる。

「異性と性行為ができる人は、カラーズの対象ではありません。女性に多いのですが、恋愛結婚はできないけど、友情結婚だったらできると。いやいや、友情結婚のほうが難しい。『男性が好きで、性行為ができるんですよね?』って聞くと、『性行為、もう誰とも何年もしてない』って。セックスレスと友情結婚での性愛の考え方は話が違う」

こんな時、友情結婚は当事者にだけ届いて欲しいと、中村さんは心底思う。

一方、男性で多いのは女性と性行為ができないけれど、「したい」と望むケースだ。友情結婚でも、「ちょっとでも、性行為ができる女性」がいいと言う。「友情結婚であっても、性行為が一回もないのは夫婦として寂しい。欠陥があるみたいだから」と。セクシャルマイノリティを自認しながらも、性行為や恋愛への呪縛に囚われている人が少なくないわけだ。

「特に恋愛をしたことがない人ほど、恋愛は素晴らしいものだと思い込んでいる。“恋愛至上主義”に囚われているというか」