恋愛や性行為が存在しない新しいかたちの結婚が徐々に増えている。友情結婚相談所「カラーズ」を運営する中村光沙さんは「性行為がなくなると寂しいと感じる結婚ではなくて、最初から性愛が存在しない異性と子どもを作った場合、その分、より子どもに集中できる結婚ができる。成婚された方々を見ていると、とりわけそれを感じる」という――。
カフェで笑い合う女性
写真=iStock.com/whyframestudio
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実際と違った「友情結婚」のイメージ

前編からつづく)

2015年3月に、恋愛を伴わない「友情結婚」専門の結婚相談所、「カラーズ」を立ち上げた中村光沙ありささん。

「自分の生活費だけがあればいい」と赤字覚悟でスタートした1年目だったが、2年目からは黒字に転じ、3年目から事業は軌道に乗ったと振り返る。

「2016年は17件の成婚があり、その翌年は11件と下がりましたが、以降、年間40件ぐらいで推移して、今年は初めて50件になりそうです」

順調にいきそうだと早い時期に思えたのは、想定していたよりも固定費が少なく、事業拡大のための投資資金の積立が大幅に早く達成できたためだ。ここ数年はより多くの人に広めようと、広告宣伝にも力を入れている。

起業からもうすぐ10周年。それは当初思い描いていた、「友情結婚」のイメージと実際とは違う、と思い知らされた年月でもあった。

「友情結婚の当初の私のイメージは、ゲイの方とレズビアンの方の結婚でした。『親を安心させたい』、『周囲にセクシャルマイノリティだとバレたくない』ための結婚だから、めちゃくちゃドライな結婚だと思っていたのです。でも蓋を開けてお客さまと話してみると、特に男性の方は、『性行為をしないこと以外は、普通の、あたたかな家庭を築きたい』と言われることが多いです」

面談で自覚するセクシャルマイノリティ

登録会員を見れば、男性は同性愛者が多いが、女性はそうではなく、アセクシャル(恋愛感情も性的な欲求もない)やノンセクシャル(恋愛感情はあり性的な欲求がない)がほとんどだというのも、これも蓋を開けてみなければわからないことだった。

「男性と性行為ができない」と、中村さんを前に初めて告白する女性も多い。

「多くの女性は、普通に男性と結婚するものと思っていて、でも男性と性行為ができなくて、いろいろな方法でトライしてみてもできなくて、カラーズに来られるわけです」

中村さんと面談することで、自身のセクシャリティを自覚する女性たち。彼女たちは自分と同じような女性が少なくないことを知り、性行為のない結婚を選ぶ道に踏み出していく。その女性たちの多くもまた、「夫婦に性行為がないという以外は、普通の家庭を築きたい」と望んでいる。

「カラーズができて、友情結婚のイメージはめっちゃ変わったと思います。多くの方が、結婚して、協力して家庭を築いて、妊活して、子どもを授かったら、子どもを産む。夫婦で協力して子どもを育てていきましょう、という結婚生活を考えているわけです」