成功するまで「つながり」を作れ
もう一度リンの話に戻ります。ブランド論において他者との「つながり」が求められる理由は、成功すること(道具的機能)と、他者からの承認を得ること(表出的機能)という観点から解釈することができました。このうち前者、成功するための「つながり」についてもう少し考えてみます。考えてみたいのは、どのように、どれほどの「つながり」を作れば成功することができるのか、ということです。
ブランド論では、自分を受け入れてくれるターゲットの承認を集め続けることが推奨されています。たとえば以下のとおりです。
「決して『目立つ』ために焦ったりしてはいけません。大切なのは、質の高い情報を発信してファンに貢献し続けることです。自分の評判を高め、自分のコンテンツに反応してくれた人を大切にすること、感謝の気持ちでコミュニケーションを深めていくことが重要です」(大元、129p)
「いつとは言えませんが、あるタイミングで必ず、これまであなたが一生懸命つくり上げた人間関係が一気に発展し、最終的には本物の人脈となって自分に返ってくるのです。もちろん、そうなるためには一人ひとりとの信頼関係が大切です。誰に対しても一期一会の精神で名刺交換ができれば、自ずと良い評判が立ち、どんどん人脈が広がっていくと思います」(中井、174p)
「人脈・ネットワークを乱用しない」(カピュタ、229p)という言及もあります。つまり、すぐに目覚ましい成果があげられなくても、自分が承認されなくても、焦らずたゆまず、「感謝の気持ち」を持ってターゲットとなる人々に関心を持ち続け、接し続けましょう、そこから性急に見返りを求めることは推奨できません、というわけです。
これはかつて私が論じた、「万能ロジック」に近いところがあるように思います。思うようにネットワークが築けない、築けたと思えるもののまだ成果が得られない――それはまだまだ「つながり」が足りないのだ、あるいはそれらからすぐ見返りが得られるという考えが甘いのだ、いつか必ず見返りが来るから、「感謝の気持ち」で人に接し続けなさい、と。
ブランド論は、「つながり」こそが成功への最終ステップだと述べながら、その「つながり」が本当に有益なものかは「成功するまで分からない」という論理構造をとっています。いわば、著者が読者を無限に啓発できるようなロジックがとられているのです。
さて、ブランド論の考察自体はこれで終了ですが、もう一つだけ考えてみたいことがあります。次週は、セルフブランディングに対する批判的言及について考えたいと思います。