少子化だけど「子どもの絶対数」は多い東京

東京はたしかに統計的に見れば出生率が低く「少子化」していることは間違いない。

しかしながら、「少子化」している一方で「子どもの絶対数」自体はきわめて多いことは特筆するべきだろう。統計的にはこれからの時代、日本で誕生する子どもの3人にひとりは東京圏の生まれになる。東京は間違いなく少子化の最先端ではあるが、しかし同時に子どもの単純な数では日本最多になり、それが東京における「高齢者中心主義」的な地域社会の意思決定をせき止めるフェンスとして機能している。

東京には日本が少子化に悩まされていることなど嘘だと思うほど子どもが大勢暮らしているエリアが局所的に散在している。そうしたエリアでは擬似的に「町の高齢化」が抑えられており、子どもたちが多数派になって公共空間の主導権を握り、高齢者有利の抑制的なマナーやルールや不文律によって子どもたちが縛られない「聖域」をつくりだしている。

逆に地方とくに人口過疎地域では高齢者の数が圧倒的に多く、公園はもちろん児童向け施設など子どものための公共空間も次々と潰されてしまい、その流れに抗うことができなくなってきてもいる。そうした地域では見かけ上の出生率は東京よりも高くても、高齢者本位の意思決定を「うるせえ!」と跳ね返すだけの絶対的な「頭数」がもう得られなくなっている。ゆえに「将来、子どもをどこで育てるべきか?」というイシューについては、見かけ上の出生率だけで判断するのではなく、暮らす街の純粋な「子どもの数」も考慮しておくのがよいだろう。

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高齢者優位に塗り替えられていく地域社会

世の中のどこを見わたしても子どもの絶対数が少なすぎて、公共空間のイニシアティブを高齢者側に握られ、子どもたちや子育て世代はどんどん息苦しくなってしまう状況はこれから各地で増えていくことになる。

高齢者優位に塗り替えられてく地域社会のうねりに待ったをかけるには、先ほど例示した都内某所の公園のように「数の暴力」を示して巻き返していくほかない。ほかないのだが、しかし現実的に子どもの数を集めて「数の暴力」でもって巻き返せる地域は、いま全国に果たしてどれくらい残っているだろうか?

子どもが少ないため高齢者優位となった地域社会は、子どもではなく高齢者に都合の良いコミュニティ運営となり、子育て世帯を減らし、子作り意欲を低下させてしまい、さらに人口バランスが高齢者寄りになる。そうしてますます高齢者優位の意思決定がなされていく――という悪循環を止められなくなる。