シニア層で主流の「サラリーマン夫+専業主婦」が繰り下げると?
それでは毎年もらえる年金はいくら増えるのだろうか?
図表2は片働き家庭における平均年金受給額と年金繰り下げの場合の増加額を示している(夫・妻は家庭のケースに応じて読み分けてほしい)。
65歳からもらった場合の夫妻合計の平均年金額は年247万円である。それが70歳まで繰り下げると年350万円、75歳まで繰り下げると年454万円になる。
規定の65歳からもらった場合と比べると、70歳まで繰り下げで年104万円増加、75歳繰り下げで年207万円増加となる。
繰り下げの場合の年あたり増加の絶対額が大きいのはわかる。問題は損益分岐点を超えて生きられるかどうかだ。
それでは日本人の平均寿命は男性81.05歳、女性87.09歳(2023年ベース)だから、男性は70歳まで繰り下げても大丈夫(損益分岐点は81.9歳)、女性なら75歳まで繰り下げても大丈夫(損益分岐点は86.9歳)と言えるのだろうか?
男性82歳、女性88歳まで生きられるとは限らない
平均寿命をベースに年金の受給開始年齢を決めることは一見合理的だ。ファイナンシャル・プランナーの中にも、平均寿命をベースに何歳まで繰り下げても大丈夫という人がいる。
本当だろうか?
病気がちで寝たきりの人でも100歳まで生きるかもしれないし、元気で仕事も旅行もしている人でも70歳で死んでしまうかもしれない。平均寿命というのは日本人全体というマクロでみれば意味のある指標だが、個人の寿命というミクロでみた場合、あてになる指標ではない。
自分の寿命は誰にもわからないというのが真実なのだ。
立場が変わって、政府からみると、平均寿命で物事を判断するのは合理的だ。
日本人全体の平均寿命が何歳なので、受給開始年齢を65歳にすると政府の支出はいくらになる。70歳まで繰り下げる人が何%、75歳まで繰り下げる人が何%になると政府の支出は何%減る、または、増える。政府の支出は日本人全体の平均寿命にリンクするから、政府が平均寿命をベースに政策を決めるのは合理的なのだ。
年金を繰り下げると有利な点は年金受給額が増えることだか、不利になる点がいくつかあるので注意が必要だ。