メダル数は日本は世界3位だが人口対比ではそう多くない

オリンピックは世界各国の選手団が競い合う競技大会なので、やはり、各国別のメダル数のランキングが大きな興味の対象となっている。各国比較では日本の位置はどう評価したらよいであろうか。

閉幕したばかりのパリ大会での日本の金メダル数は20個でオーストラリアを抜いて世界第3位、メダル総数は45個と世界第6位だった。

基本的にオリンピックのメダル数ランキングは、金、銀、銅の順番で優先順位をつけたランキングとして発表されるのが通常パターンとなっている。日本は、図表3の通り、米国、中国に次いで世界ランキング第3位である。

メダル数の評価で重要なのは人口規模である。人口1億人の国のメダル数が人口10万人の小国のメダル数を上回っていたとしてもそれほど驚くには当たらない。世界に通用するレベルの競技能力をもつような素質のある人間が現れる確率は、国によって人口当たりではそれほど大きく変わらないと考えられるので、人口規模の大きな国はそれだけ多くのメダル数を獲得してもおかしくないはずである。

図では、この点を考慮し、もし日本と同じ人口規模だったら、各国は何個の金メダルを獲得したことになったかという数字(人口調整金メダル数と呼ぶことにする)を掲載した(図表左サイド)。

例えば、米国は人口が3億4000万人と日本の2.76倍なので人口で調整したメダル数は、実際のメダル数40個÷2.76=14個に相当すると考えられる。すると米国は確かに金メダル数世界1ではあるが、人口対比では、日本の20個より少ないと考えられる。

他方、人口調整金メダル数の多さで目立っているのはニュージーランドである。実際の金メダル数は10個であるが、人口が517万人と日本の約4%にすぎないニュージーランドの人口調整金メダル数は何と240個と日本の12倍になるのである。

ちなみに、金メダル数が3個に満たないので図には掲げていないが、人口調整金メダル数では、金メダル1個のドミニカ国(三段跳びのシア・ラフォンド選手)が1870個で世界トップ。次いで、やはり金1個のセントルシア(陸上女子の100メートルのジュリアン・アルフレッド選手)の694個である。人口は順に7万人、18万人のカリブ海に浮かぶ島国で、いずれも五輪での初めての金メダルだ。

中国は金メダル数40個で米国と並んで世界1位であるが、人口が13億人なので人口調整金メダル数では3個にすぎない。金メダル数3個以上の28カ国の中で中国を下回っているのはブラジルの2個だけである。人口を考え合わせると中国は金メダル数の非常に少ない国なのである。

全体的に、図の人口調整金メダル数を見ると、途上国で少なく、先進国で多いという一般傾向を読み取ることができる。

日本は、というと、実は、先進国の中でそう多いわけではない。主要先進国であるG7諸国の人口調整メダル数は、米国14、日本20、フランス30、英国25、イタリア25、ドイツ18、カナダ28となっており、日本は米国、ドイツに次いで下から3番目なのである。

金メダル数13個の韓国は人口調整数では31個と日本を大きく上回っており、同30個の開催国フランス並みに健闘したと言えよう。

こうした観点からは、なぜ日本ではオリンピックの獲得メダル数レベルが少ないのかが問われなければならない。オリンピック大会の起源であるヨーロッパの競技文化にまだ馴染めないところがある点や遠慮がちといった日本人特有の国民性に理由を求めず、それ以外の合理的理由を探すと、私見では、日本では高校野球がさかんだからではないだろうか。

金メダルの可能性のある運動能力抜群の高校生徒が、将来の高報酬と栄誉(イチロー、大谷翔平など)が期待できるプロ野球での活躍を展望して、みな高校野球の道に入ってしまうので、その他の競技スポーツでは怪物選手が現われにくいのではなかろうか。女性の場合は高校野球には向かわない。五輪金メダルの獲得数で近年女性選手が目立つようになったことにもこのことが影響している可能性があろう。