パートとフルタイム問わず、有休は年20日以上

ワークライフバランス施策として、ハンガリーの特徴は3つある。

第一に、ハンガリーでは、パートタイム・フルタイムを問わず、年間20日以上の有給休暇がもらえ、年齢が25歳に達すると2、3年ごとに有休日数が1日ずつ増えていく。35歳になる頃には25日、41歳には28日、45歳には30日に増える計算となる。

子育てのためにフルタイムからパートタイムに切り替えたとしても、有休日数は変わらない。しかも、毎年最低14日以上続けて有休をとらなければいけないという法律もあるから、雇用形態にかかわらず、ゆったりと休むことができる。また、有給休暇に加えて、7割の給料を保障する有給の病気休暇も年間15日あるから、有休は純粋なバケーションとしてとっておくことができる。

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子どもが3歳になるまで残業禁止

第二に特筆すべきは、母親とシングルファーザーは子どもが3歳になるまで残業禁止という法律だ。この法律は養子縁組をした母親とシングルファーザーも含まれる。

無論、育児休暇は日本よりも多く、父親・母親・祖父母うちの誰かひとりが3年間とれるようになっているという。2歳になるまでは給料の7割が支払われる(ただし、最後の1年間の受給額は月約1万2100円なので、現実には多くの親の育休は2年間)。子どもが複数いる共働き夫婦は交代してとるケースが年々増えているそうだ。

残業は1日に1時間を超えると違法

第三に、ハンガリーでは、年間250時間を超える時間外労働が禁止されており、それを超える場合は、300時間までなら残業契約を経て許可される。残業賃金は通常の残業は1.5倍、休日の残業は2倍。残業賃金を休暇日に変えることも可能だという。

人口を維持すると言われる出生率2.1にはまだ届かぬが、ハンガリーの家族政策は今のところ、ヨーロッパNo.1の出生増加率を見せている。では、日本はどうなのか――。

日本のパートの年休はたったの最大7日

まずは有休。日本では、パートタイム労働者の年次有休は最大で7日(週4日勤務の場合。週2日勤務なら3日)。6年勤務すると15日まで増えるが(週4日勤務の場合。週2日勤務なら7日)、年齢ではなく勤務年数に基づいている。だが、育児をしながら働くパートやアルバイトにとって、同じ組織で継続的に働くのは難しいだろう。だからこそ、勤務年数でしか休暇日数が伸びないのは苦しい。

その上、日本では病気休暇が法律で定められておらず、病気休暇を取り入れている会社は厚生労働省の調べによると全体の26.5%で、導入する企業でも、他の制度として有休で扱っている割合は30.4%しかない。そのため、万一病気になったときに備えて、有給休暇を使わずに置いておく人が多い。

フルタイムの年休に関しても、最低20日以上というハンガリーと比較して日本のそれは非常に少ない。日本の年休は基本的に雇用半年後に10日、以後、継続勤務年数が1年増すごとに1日(2年6カ月を超える継続勤務1年については2日)ずつ加算した日数で、“最高20日”と規定されているのだ。

厚生労働省の調べによると、2023年度に日本人が平均してとった年休は17.6日だが、取得率は58.3%だった。つまり、平均的な日本人は年休を10日しかとっていないことになる。1年間に最低20日以上、必ず14日を連続でとらなければいけないハンガリー人と比べて、日本人の休暇は半分にも満たない。これでは疲弊して子どもを作ろうという余裕は生まれにくいだろう。