なぜ「挙手できない息子」を許せないのか

Aさんは20代後半から対人緊張、対人不安などの症状が出始め、人前で話すときに過呼吸になってしまうことがあるそうです。心療内科を受診していますが、症状は良くも悪くもなっていないと感じているということでした。

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⑤の「誰のせいでその問題は起きたか」という質問は自己責任、他者責任どちらの考え方をするのかを知るためのものです。「親」と答える人が多いですが、「親のことを悪く言いたくない」という理由で「自分のせい」と答える人もいます。

Aさんは「母」と即答。母は感情の起伏が激しく、昨日は穏やかだったのに今日は感情的に怒鳴られるのが日常的で、いつも顔色を伺っていたそうです。

「母が“明るくてハキハキした子”“積極的な子”を望んでいるのは子ども心にわかっていました。だから、ヒーローショーで手を挙げられないことが許せなかったのでしょう。母の機嫌を損ねたくなくて、家の中では明るく振る舞っていましたし、学校でも盛り上げ役に徹していました」

「まわりの目」を気にして生きてきた

家でも学校でも「こうあるべきというイメージを崩してしまったら嫌われてしまう。理想像を崩すのが怖い」という気持ちがあったというAさん。ずっとまわりの目を気にして、がんばって明るくふるまってきたのでしょう。でも、ありのままの自分でいられなければ、心が疲弊してしまって当然です。

対人緊張、対人不安があり、常に人の目を気にしていると、緊張した状態が続き、自律神経のバランスが崩れやすくなります。Aさんの疲れやすい、よく眠れないといったストレス症状も、そのせいだと考えられました。また、人の目を気にしていると、人と話す時にリラックスしたり、本音を話したりするのも難しくなることから、心を許せる友達がいない、異性とつき合うことができないと訴えるクライアントさんもいます。

7つの質問で最も大切なのは、最後の質問「では、その問題に対して本当はどうしたいか」です。Aさんの答えは「自信を取り戻して、人前で堂々と話したい。もっとワクワクできるような日常を送りたい」でした。