その左派の一部は、「Kハイブ」というニックネームで呼ばれるハリス氏の支持者グループと激しく対立した過去もあります。また、左派の中では、ウォーレン議員は支持に回ったものの、リーダー格であるサンダース、オカシオコルテスの両議員は、ハリス氏への最終的な支持はまだ表明していません。

仮に党内左派の全面的な支持を受けることができないと、2016年に多くの若者が棄権することでヒラリー・クリントン氏がトランプ氏に負けた選挙の再現になってしまいます。格差問題に関する柔軟で時代に適応した政策を打ち出し、党内左派を取り込むことはハリス氏にとって非常に重要です。

もう1つの敵はトランプ陣営そのものです。トランプ陣営は「忘れられた白人層」を代表すると言って良いJ.D.バンス上院議員を副大統領候補に指名することで、この国内格差問題において「自分たちこそ苦しんでいる労働者の代表」というイメージを確固たるものにしています。

まずは「格差解決」策で党内左派を味方に

彼らの戦術は、庶民の味方は自分たちであり、人権派を自称するハリス陣営はエリートの代表というイメージを作り上げることだと思います。万が一このパターンにはまると、接戦州での勝利は難しくなってしまいます。

ハリス氏の父親は、UCバークレーを出て長年スタンフォードの教授を努めた経済学者です。ケインズ後の経済学の先端にいた人で、柔軟な考えの人のようですが自由経済を大前提にしている人であることは間違いありません。母国ジャマイカの経済成長戦略にも深く関与しており、ハリス氏自身は、その父親の影響を強く受けているようです

そのハリス氏には、左派の主張を丸呑みするようなバイデン流の政治的取引は馴染まないのかもしれません。ならば、21世紀の現在において、人権だけでなく、父親が一生を捧げたように経済問題においても「全体の成長により格差を解決」する思想を打ち立てるべきです。その上で党内左派の積極的な支持を取り付けて、トランプ/バンスという難敵と正々堂々と戦う、この正面突破作戦こそがハリス政権を実現する近道だと思います。

当記事は「ニューズウィーク日本版」(CCCメディアハウス)からの転載記事です。元記事はこちら
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