「ビッグデータ×AI」のメガテック企業
ここでウーバーが「ビッグデータ×AI」をどのように活用してきたかを見ていきたい。プレジデントオンラインの「ウーバー創業者がジョブズやベゾスになれなかった決定的理由」という記事でも紹介したように、創業者トラビス・カラニックがイリーガルな営業手法を押し通したり、大量のギグワーカーを生み出したりするなど、ウーバーには毀誉褒貶がつきまとう。だが、世界的なメガテック企業として革新的なビジネスを創出してきたことに異論を唱える者はいないだろう。
日本では規制の問題もあり、フードデリバリーの「ウーバーイーツ」のほうが浸透しているが、もともとウーバーは、アメリカでライドシェアの会社として誕生した。アメリカではタクシーを呼べば10分も15分も待たなくてはいけなかったのが、「ウーバーアプリ」で配車リクエストをすると、3分程度ですぐに配車されるようになり、利便性が一気に高まった。
背景にあるのが「ビッグデータ×AI」だ。「ウーバーアプリ」には、需要サイドである乗客と供給サイドであるドライバーを結びつける仕組みがある。乗客の位置情報から精度の高い需要予測を行い、効率よくドライバーとのマッチングを図っている。さらに、ルートの時間と距離、交通量、現在の乗客とドライバーの需給などの変数に基づいて価格が変動する「ダイナミックプライシング」が可能になる。
AIが配達時間やルートを高精度で予測
その基盤となっているのは、ウーバーが独自開発した「ミケランジェロ(Michelangelo)」と呼ばれる機械学習プラットフォームだ。あらゆる事業のデータは一元的にミケランジェロに格納され、蓄積された大量のデータと機械学習を通じて、より精度の高い予測を実現している。
ウーバーは詳細を公開していないが、例えばウーバーイーツでは、次のようなことが行われていると考えられる(写真は中国のフードデリバリー大手「美団」の事例)。
「ウーバーイーツアプリ」でフードデリバリーを頼むと、注文した顧客と配達員の状況がヒートマップに表示される(図表1)。
ズームインすると配達員一人ひとりの位置情報がリアルタイム表示され、いくつ注文を抱えているかも確認することができる(図表2)。
過去のデータとリアルタイムの情報を参照してAIが配達時間を予測し、複数の注文を抱える配達員に対して、最適な配達ルートの指示を出す(図表3)。
ライドシェアにせよ、フードデリバリーにせよ、ウーバーの提供するサービスの裏側には、このような仕組みが動いており、新しく取得したデータをAIが学習することによって、進化を続けているということだ。