「少数の白人で多くの非白人を支配する」という野望
共和党が独裁者然とするトランプ氏を担ぐのには、党の存続にかかわる切実な背景がある。
アメリカはここ近年、急速に人種が多様化している。移民によるPOC(ピープル・オブ・カラー)の人口増加で、今や若者の半分近くが非白人だ。彼らの7割近くが、社会保障に手厚く、女性やLGBTQ、移民の権利を拡大している民主党を支持している。富裕層への増税も、経済的に苦しい若者たちからの支持が根強い。
逆に、共和党支持者の核は年配の白人男性だ。その白人が2045年にはマイノリティになる。だからそれまでに白人党である共和党にすべての権力を集中させたい。つまり、マイノリティがマジョリティを支配する国を作る、そのための計画が「プロジェクト25」なのだ。トランプ氏を王様のように担ぎ上げた最高裁の判断も、これで説明がつく。
こうした考え方が、自分たちのアイデンティティを奪われてしまうような気持ちになっている白人層に響いているのだ。
この事件は本選にどのような結果をもたらすのか
一方で共和党支持者の中にも、あまりに極右で過激なやり方に反感を持つ者も少なくない。そうしたMAGA党(トランプ党)を嫌がる中道的な市民の受け皿として、民主党も同じ白人のバイデン氏を擁立している。つまり新しい候補者を立てるにしても、中道右派からリベラルまで幅広い層が全員納得する候補者など、今どこにもいない。
「バイデン下ろし」で分断している民主党は、バイデン氏続投にしろ新たな候補者を立てるにしろ、空中分解してトランプ氏に打ち負かされるリスクを抱えている。
ラボのZ世代メアリーは2022年の中間選挙を挙げて、こんな意見を述べてくれた。
「レッドウェーブが来る(共和党が大勝する)と予想されていたけれど、結局そうはならなかった。トランプ氏は絶対に嫌だという人はたくさんいる。だからまだ希望を捨ててはいけない」
とはいえ、暗殺未遂事件を経てトランプパワーはかつてないほど膨れ上がり、バイデン大統領と民主党の前に高い壁のように立ちはだかっているのは確かだ。この事件が11月の本選にどのような結果をもたらすのか、アメリカ国民は固唾をのんで見守っている。