蓮舫氏が「マイク納め」で訴えたこと

蓮舫氏が6日夜に新宿区で行った最後の演説、いわゆるマイク納めでは、聴衆に対して主に以下のような政策を順番に訴えかけた。

・自身の子育て経験を語りながら「子育て支援は産めよ増やせよではなく、孤独、不安に寄り添うこと」が重要だと説いたうえで、「結婚しないという選択や、同性パートナーと暮らすという決断、選択的夫婦別姓が実現するまで婚姻届を出さない男女カップルの判断や、1人で子供を育てるという決断、そのどれをも尊重する誰も排除しないダイバーシティーの東京を作り上げたい」

・「プロジェクションマッピングの2年間関連予算48億円」をやめて、「子どもを3人以上育てている人、住民税非課税世帯の人たちへの月2万円の家賃補助」に振り分ける。

・「水道料金未納の人の自宅に検針員が訪ねて確認するのを2年前から突然やめて郵便に変わった」のを「丁寧な対応」に戻し、「福祉部局につないでその人たちを底上げする」

・「東京都と公契約を結びたい企業に、若い人たちの待遇を改善しなければ手を挙げられないようにする」ことによって、若者の経済を活性化する。

・「保育や教育、医療、介護などの分野で働いている若い子の奨学金返済を東京都が支援する」ことで若者の雇用を安定させるとともに、医療や介護などの「持続可能性を東京都が牽引する」

写真提供=Yusuke Harada/NurPhoto/共同通信イメージズ
街頭演説する蓮舫氏と演説を聞く人たち(2024年7月6日)

「マジョリティーから共感を得る」という視点

このように並べると、演説前半はLGBTなどの性的少数者に対する視点や、住民税非課税世帯、水道料金未納者などの超貧困層への対応に重点が置かれていることが分かる。

もちろん、こうしたマイノリティーに対する政策は重要だ。個々人がそれぞれ尊重され、いざとなった際のセーフティーネットが用意されていることによって、人々は安心して経済活動や社会的営みができるようになるからだ。

しかし、それを踏まえてもマイノリティーへの政策に重点が置かれすぎてしまい、マジョリティーへの訴えかけが弱くなってしまったのではないかと感じる。

演説後半では若者の待遇改善や奨学金返済について述べているため、せめてこの話を演説前半に持っていき、若者の経済を活性化させることをまずは重点的に述べ、その後に子育てなどの話につなげていったほうが、まだ大衆に訴えかける演説になったのではないかと思えてならない。

個々の人権や困窮者への経済支援を大切にするのはリベラル勢ならではの重要な視点だが、その少数者に当てはまらない人にとっては響きにくい政策でもある。

どんなに崇高な理念を掲げても、多数から支持されなければ選挙に勝つことは難しい。

蓮舫氏の政策や演説が支持拡大につながらなかったのは、マジョリティーから共感を得るという選挙において最も大切な視点が抜け落ちてしまったからではないだろうか。