「困っていることはない」は黄色信号

この3つの問いに対する答え方で、認知症を患っている可能性を評価します。また、これら質問の最中に、患者さんがうまく答えられず周囲の人に手助けを求めようとしたり、付き添いのご家族のほうを振り向いて確認を求めたりする仕草を「振り向き兆候(head turning sign)」といい、認知症を示す重要なサインと考えられています。

さて、最初の質問項目「現在、困っていることはありますか?」は、病気の自覚(病識)の有無を問うています。「はい、日常生活で困っていることがあります」と答えればむしろ心配ありませんが、「特に困っていることはありません」もしくは「物忘れはありますが、年のせいで困ってはいません」という答えには要注意です。

認知症の人は、病識が低く、取り繕う振る舞いがあるため困ったことはないと主張するからです。

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時事的ニュースに関心が持てなくなる

次の「現在、楽しみはありますか?」に対して具体的な答えを得られた場合は正常です。たとえば「飼い犬にエサをあげたり、一緒に近所の公園に散歩に行ったりするのを楽しんでいます」といったはっきりした内容を伴う答え方をした場合です。

何も答えないか、答えたとしても「何でも楽しんでいます」といった抽象的で、曖昧な表現に終始する場合、あるいは1年以上やっていないゴルフや手芸の趣味について話す場合は要注意です。

最後の「最近気になるニュースを挙げてください」も、「先月○○大臣が辞任した」「先週○○県で大雨があった」などの具体的な最近のニュースを挙げられれば大丈夫ですが、3カ月以上前のニュースや具体性が伴わない内容の話をする場合は認知症の疑いありと判断します。

認知症の人は、多くの場合、意欲が低下して、日常生活を送る上での楽しみを持っていません。趣味をやめたり、物事への興味を失ったりするケースが多く見られます。時事的なニュースにも関心が持てず、記憶もできないので、最近どんなニュースに興味を持ったかを聞いても答えられません。

2つめと3つめの項目は、これらの特徴を評価する質問です。以上は、医療機関で行う問診ですが、ご自宅や施設でも簡単にできる質問としておすすめです。