上手なNOで目指すは相手とのウインウイン
こうして、上司に冷や水を浴びせると同時に、正当な理由を言えば、誰が見ても大人なのは上司よりあなた。大きなもめ事に発展する前に、事を収めることも可能です。ほかに、熱くなっている上司のハラスメント行為にNOを出す部下の行動としては、無関心を装う、なぜ怒っているんですか? などと逆質問して一瞬頭を切り替えてもらう、じっと見つめて沈黙する、上司の言葉をオウム返しで返すなどのワザも覚えておくといいでしょう。
ちなみにパワハラにNOを言う場合の最後の手段は、「音声をICレコーダーに録音させていただきました」でしょうか。まあ、ここまでしないまでも、とにかく熱くなっている相手の頭を切り替えさせてから、NOと言うのがいいですね。こうして意味のない軋轢を回避しつつ、「断り名人」とも言えるアサーティブな大人を目指す。これが正しい自己主張の方法となるでしょう。
そこで最後に、アサーティブになるための条件をいくつか紹介しておきます。
まずは自分の価値観に忠実であること。これがブレてしまうと、アサーティブとは言えません。また相手の意見はしっかり聞き、常に自分がどうあるべきかを考えることです。そのために前出のように深呼吸などの準備運動をして、自身の熱を冷ましてから対峙することを心がけましょう。さらには、常に自分と相手の権利を守り、このNOを言っても、「自分もウイン、相手もウイン」になる道を探ることを怠らないことも大事です。
断り上手は、人生の達人……これは私が繰り返し言ってきた言葉です。自分が子どもだった頃を思い出してみてください。好き嫌いや、嬉しい悲しいなどの感情を素直に出して、大らかでハッピーな時間を過ごしていた記憶を持つ人が多いでしょう。大人になって生まれるNOの軋轢は、大人のスキルで解消すればいいのです。
※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年5月31日号)の一部を再編集したものです。