フォーブス誌インド版がインドシンクタンクのCMIEのデータをまとめたところによると、インドの失業率は改善傾向にあるものの、昨年10~12月期には高い数字を記録していた。20~24歳の若者の失業率は44.49%と、半数近くに達している。

インド・マドラス開発研究所のA・カライヤラサン助教授(経済学)は、英インディペンデント紙の取材に「紛争地帯に必死に行く人々は、単純により明るい未来を夢見て渡っているわけではなく、極端な絶望に突き動かされて赴いているのです」と語る。

動画に映ったロシア軍の虚像に騙される

被害者たちの一部は、地元の職業あっせん業者を通じてロシア行きの運命をたどった。ほか、多くの人々がYouTube動画やソーシャルメディア上の広告を視聴して興味を惹かれ、エージェントに接触している。

インド人男性が運営するYouTubeチャンネル「Baba Vlogs」(チャンネル登録者約30万人)は動画を通じ、ドバイでのウェイターに加え、ロシアで“食品配達”を行う「軍事ヘルパー」を募集していた。ボイス・オブ・アメリカがこうした動画の存在を指摘していた。チャンネル主催者は動画に虚偽の内容はないと説明していたが、チャンネルは現在、すべての動画を削除している。

すべての動画が削除されたBaba Vlogsのチャンネル

TikTokの動画を見る限り、ロシアでの兵士生活は悪くない。動画では、楽しそうに訓練を積む新兵たちの生活が描かれている。だが、ロシアの戦地へと連れ去られた前掲の35歳ネパール人男性は、スカイニュースに対し、「私なら行かないように言うでしょうね」と語る。

「TikTokでは、派手な軍服を着て、派手な銃を持った兵士たちを見ることができます。でも、現実はそんなものとはまるで違うのです」

ついにインド政府も動き始めた

ロシアは国内でも兵士募集に必死だ。ニューヨーク・タイムズ紙は昨年夏、ロシア国防省が2023年春から広告キャンペーンを展開していると報道。戦地に赴くことの「男らしさ」と、月20万4000ルーブル(約33万5000円)の高給で誘い込んでいるという。

事態はインド政府も認識するところとなった。AP通信は今年3月、「自国民の一部がロシア軍に騙されて働いているとインドが発表」と報じた。インド中央捜査局は、少なくとも35人のインド人が、人身売買ネットワーク経由でロシアに送られたと発表している。