AIはまだまだ普及していない
生成AI市場の今後の発展はひとえに「普及度」にかかっている。すなわち、企業や個人が日常の業務や生活の中で、AIをどれだけ自然かつ積極的に活用するか、スマホや自動車のような存在になっていけるかという問題だ。
そうした末端の需要があってこそ、データセンターやクラウドでの活用が活性化し、AI半導体やテック大手が繁栄し、エヌビディアやメタ、マイクロソフトなどAI銘柄の株価の急伸が正当化できるのだ。
米企業による生成AIの利用実態を分析した英エコノミスト誌の2月29日付の記事では、興味深い傾向が浮かび上がった。「過去2週間でAIを利用して製造やサービスを行った企業が、業界の全体に占める割合」で最も高いのは「IT産業」。2023年9月の14%前後から、2024年2月には17%程度にまで増加している。
ただ、逆に言えば、AIを生み出したテック企業でさえ、AIの利用率は未だ20%未満にとどまっている。
IT産業でさえAIを利用していない
「IT産業」に次いで利用率が高いのが法律事務所などの「プロフェッショナルサービス」で、約12%だ。続けて、「教育分野」が9%、「不動産」が8%、「金融保険」が7%となっている。
一方、出遅れが目立つのが「医療」の5%、「経営・管理」の4%、「小売」の4%、「製造業」の3%、「建設」の2%などである。
なぜ生成AIの利用率はまだ低いのか。なぜ業界によって差があるのか。
まず、利用率の高い分野から見ていこう。テック業界での利用率が高いのは、生成AIがコーディングの要件定義から実装にいたるソフトウェア開発作業の自動化に向いているからだと考えられる。
しかし、そのIT産業でもAIの利用率は20%未満とまだ低い。