復興政策は「何」を間違い続けているのか

増税VS減税を問う上で非常に象徴的な事例として震災復興を考えてみよう。令和6年年明けに我が国を襲った能登半島地震の復興は今国会でのテーマとなっている。しかし、断言しても良いが、岸田政権の政策ではインフラを直す「復旧」は進んでも、「復興」は実現することはない。

被災した輪島朝市の跡地で捜索活動を行う自衛隊(画像=航空自衛隊/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

東日本大震災以後、平成23年度~令和4年度まで、復興予算は約40兆円が投入されてきた。その財源の約4割は復興特別所得税と住民税1000円の上乗せ分とし徴収されてきた。しかし、被災三県(岩手県・宮城県・福島県)が復旧したとしても、依然として「復興」したとは言い難い。むしろ、その後も緩やかな衰退が継続している。これは「増税⇒補助金」という流れでは地域復興はあり得ない証明されたとも言えよう(ちなみに、復興増税は霞が関庁舎改修費や海外芸術家派遣費など、シロアリ官僚によって流用され、納税者の思いを踏みにじる悲惨な使われ方をした例も少なくない)。

能登半島地震で実行すべき政策は「復興減税」

逆に、国民が支払った復興所得税を被災三県の減税政策に使用した場合どうなっただろうか。なんと被災三県の道府県民税及び事業税を現在に至るまで全額無税にすることも簡単にできた(令和3年度決算カードによると、同被災三県の道府県民税及び事業税合計額は約3600億円に過ぎない)。これは黒字企業と富裕層にとっては極めて魅力的な地理的条件となる。この減税政策に加えて、同地域に対する新たな設備投資の減価償却を即時100%償却で前倒しする政策を実施すれば、日本中または世界中から投資が集中し、いまや一大経済拠点と化していた可能性がある。

ちなみに、この即時償却制度は投資誘発に極めて有用であることは証明済だ。美しい山林を破壊し尽し、電気料金に巨額の負担を強いる太陽光発電が日本中に拡がった理由は、固定価格買取制度が魅力的であっただけでなく、即時100%償却の投資案件であったことも重要だった。同政策が復興ではなく再エネ投資利権に使用されたことは痛恨の極みであり、日本の黒歴史である。

したがって、今回の能登半島地震に関しても、インフラ復旧は別として、実際に実行すべき政策は復興減税である。同地域に集中する航空・防衛クラスター産業や観光関連産業などを中心に即時100%減価償却が認められれば、大規模な設備投資が実行されることは必然であろう。さらに、地方自治体が法人住民減税を実行すれば、企業によって多くの雇用がもたらされて若者も能登半島に戻ってくるだろう。徒に補助金をバラまくのではなく、あくまでも民間主導の復興政策を実施することで、東日本大震災の復興増税の失敗を繰り返す愚を犯すことはなくなる。