だれかを「土下座」させればいいわけではない
本来であれば、一番稼げる商品は必然的に社会では権威になっていてブランド力があるものだという話になりますから、芸能事務所としてはスキャンダルをさばくにあたって「着地点をどこにするか」と「本当に悪かったことはちゃんと見極め、徹底的にお詫びし、再発防止を宣言しそれを忠実に守ること」とにあるでしょう。その点では、たびたび大きなスキャンダルに見舞われた吉本興業の「謝罪マスター」竹中功さんの名著『謝罪力』は、いまなおバイブルのひとつと言えますが、残念なことにこの知見が十全に生かされてきているとは言えません。
俺は何も悪いことをしていないと感じていても、違法ではないが不適切で、お詫びしなければならない事態になることは、社会人になれば幾らでもあります。私は何でこんなことで責任を押し付けられ菓子折りもってお詫びしに行って土下座しているのか。そんな経験はたくさんありますよね。
そういう土下座を、権威ある人物や会社、政治家、国家にやらせることが読者や社会のカタルシスになることはたくさんあります。堕ちていく権威に対して、ざまあみろという見世物を鑑賞する感覚です。もちろん、悪かったことは是正しなければなりませんし、何より大事なことは、真摯に対話し、再発防止も含めた枠組みを作り着地を目指して地道に取り組んでいくことで社会が少しでも良くなるのを目指すことでしょう。
松本人志さんの件も、松本人志さんの理解と共に、被害を訴え出ている女性の方たちも含めた話し合いや救済の仕組みが必要なのだろうと思いますし、吉本興業も松本さんを守る仕組みをきちんと考えたうえでお笑いファンにとっても損のない、あるべき着地点を目指してほしいと心から願っています。