自社工場を持つことで「価格競争」ができる

国内外にSPA型ブランドは多々ありますが、ハニーズが他SPAブランドと大きく異なる点が商品面以外に2つあります。1つは自社縫製工場を持っているということ、もう1つが積極的な脱中国の姿勢を鮮明にしている点です。

業界外ではあまり知られていないと感じますが、ハニーズは昔から自社縫製工場を持っています。大手SPA型ブランドで自社縫製工場を所有しているのはZARAを展開するインディテックスくらいでしょう。ユニクロでさえ持っていません。海外ではミャンマーに縫製工場を持っており、22年8月にはミャンマー第3工場の新設を発表しており、23年からの稼働が予定されていました。

自社工場を持つということは在庫リスクが増えるという反面、圧倒的に価格競争力が高まるという利点もあります。例えば、ハニーズのスリムスキニージーンズは定価2280円ですが、ジーユーのレディーススキニージーンズの定価は2990円となっています。

後述する「積極的な脱中国」とも関係しますが、ミャンマーの自社工場生産も含めてハニーズの商品は中国からの調達比率を年々減らしており、23年5月期では2.3ポイント減少してわずか7.1%しかありません。自社工場生産分も含めてミャンマーからの調達比率が45.4%とほぼ半数に迫る勢いとなっており、次いでバングラデシュ27.4%、カンボジア10.2%、ベトナム9.0%という比率になっています。おそらく、24年5月期以降も中国からの調達比率は下がり続けると考えられます。

安価な女性アパレルが並んでいる=ハニーズホームページより

赤字続きだった中国から撤退する英断

また、販売においても「脱中国」が鮮明で、ピーク時には600店舗弱あった中国店舗を徐々に減らしていき、2018年9月末で全店閉店しました。中国販売からの完全撤退です。理由は2014年以降中国での営業赤字が続いたことによります。

2006年に中国に進出してから12年間で撤退となりましたが、2018年にハニーズホールディングスの江尻義久社長(現会長)は日経ビジネスのインタビュー記事で「赤字続きの中国から撤退できてせいせいした」とコメントしており、それに対比して日本国内の好調さを強調しておられました。

20年春のコロナ禍以降、政治的リスクの高まりも含めて日本企業の中国撤退の動きが顕在化していますが、ハニーズはその先駆けだったといえるでしょう。