女性からは「自衛隊のお風呂に行きたいけど…」という声も

その一方で、女性からはこんな声も聞かれた。「自衛隊のお風呂に行きたいけど、夕方からだから帰りは暗くなるでしょ。道があんなだから、がけ崩れも怖いし、行きたくても行けない。午前中とか、昼間にもやってくれたらね」

お風呂に入れて嬉しそうな男性とは対照的に、女性の悲しげな表情は、とても印象に残った。水も熱源もない場所でお風呂を設営するというのは、並々ならぬご苦労があることだろう。自衛隊の方々も、長引く避難生活でお風呂がいかに重要な支えになるか、よくご存知だと思う。ぜひ、少しでも多くの地域で、明るいうちからお風呂に入れるよう、取り計らって頂けることを願う。

国道をさらに進むと、道路が大きく崩れていて、いよいよ車では進めなくなった。国土交通省の方がいたので、徒歩で進んでよいか確認すると、「自己責任ですのでご安全に」とのこと。割れたアスファルトの上を慎重に歩く。

寸断された道路の先は、輪島市深見町。今も孤立状態が続いていたが、歩いても歩いても人の姿がなかった。避難所も訪れたが、扉が閉ざされていて人の気配がなかった。後で知ったのだが、1月8日に全ての住人が自衛隊のヘリコプターで避難していた。

その時、海の方からゴーーという轟音が聞こえてきた。国道は海からだいぶ高い位置を走っており、地形も入り組んでいて海辺の様子は見えない。とりあえず、海に向かって崩れた道を下りてみる。

すると、港でも何でもない浜辺に、海上自衛隊の巨大なホバークラフトが上陸していた。ホバークラフトには4台のトラックが積載されており、1台ずつ自走で地上に降ろしている。

孤立状態を解消するべく、自衛隊と国土交通省が連携し、民間の建設会社の機材を運び入れていたのだ。偶然にも、貴重な場面に遭遇した。