新年早々、新たなトラブル
正月ボケで少々遅くまで寝ていたところを着信音で起こされたのは、1月4日のことだった。スマホに表示されているのはケアマネさんの名前。
「実はまた、お父様が昨日から帰宅されていなくて。お電話したら、またラブホテルにいらして、お金がなくて出られないとおっしゃっています」
また? 前回から2週間ほどしか経っていないではないか。
「息子さんに電話してお金を持ってきてもらったらどうですか、と言ったら、『怒られるから電話できない』と……」
たしかに、父親のところに電話をかけても出ない。仕方がないので姉に頼むと、姉からの電話には出たので、ラブホの場所が判明。前回と同じであった。とにかく迎えに行かないことには何も始まらないが、以前の私の激昂ぶりが不安だったのか、姉も一緒に行くという。
そういうわけで、新横浜の駅で待ち合わせ、2人でホテルへ向かう。姉と並んでラブホの玄関をくぐったことのある人間なんて、この広い日本で何人いるのだろう。背徳の関係ではないが、いずれにしても、おおっぴらに言える話ではない。
フロントに言って鍵を開けてもらい、部屋に入ると、
「おう、来たか」
相変わらず、恥じる様子は皆無。ふつふつと怒りが湧き起こるがぐっとこらえて、「帰るからちゃんと服を着なさいよ」と声をかける。父親が立ち上がってジーンズを引き上げると、失禁の跡。オシッコも満足にできないのに、デリヘルは呼ぶのか――。
自動精算機でチェックアウトすると、宿泊代に延長料金、ルームサービスで食べたピザやらステーキやらの代金を合わせて30,000円也。シティホテル並の金額になっている。自分の財布から万札を取り出し、一枚ずつ入金する行為が虚しい。
駅の方まで行かないと、タクシーが拾えない。ラブホを出て、怒りのあまり早足になる私、父親を気にして振り返りながらゆっくり歩く姉、そして杖を突きながらヨタヨタついてくる父親。なんとも哀れな行列であった。