「許せるレベルなら自分からいかないと」

次は「いいねタイム」。受付の女性がアナウンスする。

「人数制限はありません。いいなと思った方にその気持ちを伝えるつもりで、いいねボタンを押しましょう」

しかし私は、自分の気持ちを知られたくない、下に見られたくないという変なプライドが邪魔して、どの男性にも「いいね」を押すことができなかった。

そして私自身にいいねボタンを押してくれたのは10人中1人だけ。どの人とも楽しく話したつもりだったが、やはり自己紹介文が書かれていないことが男性陣から不評だったのだと直感した。「許せるレベルなら自分からいかないと」と、婚活アドバイザーである成人した娘の顔が頭をよぎる。

最後は「マッチングタイム」。

私は5番の田中さんを第1希望に、もう一人、同い年の営業職の男性を第2希望にして送信した。選り好みしている場合ではないのに、いいねボタンを押してくれた男性にはマッチング希望を出せなかった。

「それではマッチングタイムの結果を発表します。結果発表の画面を開いてください」

帰り道は、誰もが疲れていて、空気が重い

再び女性スタッフの案内が流れる。そう、いいねやマッチング希望の送信だけでなく、「結果発表」も、すべて自分の手元のスマホから行える。しかし隣にはマッチング第一希望の田中さんが座っている。同じ番号の男性に意思表示するのは何とも気まずい……これは後々も悩むところだった。

結果発表の画面を開くと、〈残念ながらマッチングはありませんでした〉と表示された。

隣の田中さんもため息をついているから、私ではない別の女性に希望を出し、かなわなかったのだろう。

「それでは男性の皆様は全員ご退室ください。そしてマッチングされた方は入り口付近でお相手の女性をお待ちください。男性の退室、続いてマッチングされた女性の方の退室、そのあと残りの女性の方に退室いただきます」

マッチングした女性は4人。私は“残りの女性”グループで最後に退室した。残った女性が同じエレベーターに乗る。誰もが疲れていて空気が重い。開始から帰りのエレベーターに乗るまで1時間半弱。短くて長い、そして大失敗の初個室パーティであった。