出題者はハンドル部分まで含めて蛇口と認識していましたが、構造を調べてみるとハンドル部分と水が出てくるパイプ部分は別物の様子。パイプ部を「蛇口」と捉えれば「本」で違和感はありません。

毎日新聞の用語集には「助数詞の基準」というページがありますが、ここには身の回りにあるものから、普段はあまり目にすることのない「大砲」(「門」で数えます)といったものの数え方まで載っています。残念ながら「蛇口」は載っていませんでしたが、眺めているだけでも新しい発見の多いページです。それにしても助数詞は難しい。

「3000人台を突破」は何人なのか

【質問】
新型コロナウイルス感染者が「3000人台を突破」――これは何人になったということ?

【回答】
3000人超……34.0%
3001~3999人……19.9%
4000人以上……27.7%
上の複数に当てはまり、決められない……18.4%

「3000人台を突破」と言った場合、いったい何人になったことを指すのか。回答は割れました。「3000人超」と「3001~3999人」を合わせると半数を少し上回りますが、同時に「4000人以上」と「決められない」の合計も半数近くになります。「~台を突破」という言い方自体に分かりづらさがあると考えるべきでしょう。

「台」とはどういうことか。国語辞典では「数量の大体の範囲を示す語」(岩波国語辞典8版)のような説明が多いのですが、大辞林4版は具体的に、

数量の大体の範囲を示すのに用いる。例えば「千円台」は「一〇〇〇円から一九九九円まで」。

と説明しています。「1000円台=1000~1999円」という幅のあるゾーンを表しているということです。質問文の例に即していえば「3000人台」とは「3000~3999人」を表していると言えるでしょう。

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幅のあるラインを突破?

「3000人台を突破」というのは、この幅のあるゾーンを「突破」することになるのではないでしょうか。「3000人超」の場合や、「3000人台」とほぼ重なる「3001~3999人」の範囲の場合には、「3000人台を突破した」とは言いにくいように思われます。

とはいえ、「~人台を突破」のような言い方をよく見るという人もいるかもしれません。「ある目標・数量を超えること」(大辞泉2版)という意味を持つ「突破」は数字と合わせて使われることが多いので、そのように感じるのかもしれません。ただし辞書の用例では「人口が一億人を突破する」「参加者は五万人を突破する」「一千万を突破した」など、「台」のような幅のある数字は見られません。あくまで一つの数字を挙げて、そのラインを超えることを「突破」と言っています。

もちろん世の中には細い線もあれば太い線もあるわけですから、「3000人台」のような太いラインの上に出ることを「3000人台を突破する」と言ってはいけないという理屈はありません。その場合は「3000人台を突破」イコール「4000人以上になること」を意味しますが、あまり釈然としません。なぜそんな幅の広いラインを想定しなければならないのか。そうした書き方よりは、「4000人台に乗せた」のような表現を選んだほうがよいようにも思います。