安易に時短勤務を選ぶと「時短トラップ」に

現状では、家事・育児、あるいは学び直しに時間を割きたい男女が、あえて非正規や時短勤務を選ぶ傾向もありますが、浜田氏によると、安易に時短勤務を選ぶことで、その後「時短トラップ」と呼ばれるリスクに繋がる可能性もある、と危惧します。

つまり、若者が時短勤務を取得した先輩を見て、「自分も時短にしてもらわないと、(仕事と)家事・育児や学び直しなどとの両立ができない」と思い込み、会社にその旨を願い出ると、会社の中で「期待されない社員」と見られ、責任ある仕事を任せてもらえなくなる。すると、就労時間の減少に伴って収入が減るだけでなく、昇進も遅れ、若者のやりがい喪失にも繋がり、仕事への希望や意欲を失う……といった悪循環です。

浜田氏は「フルタイムの正社員は、残業し放題」だと考えるような、旧態依然とした会社ほど、こうした時短トラップが起こりやすい、といいます。

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「一方で、たとえば味の素のように、定時を午後4時半までと早める、あるいはNTTのように、コアタイムをなくして『スーパーフレックス制』を導入したり、柔軟にリモートワークを選択できたりするようにすれば、従業員も自分の生活に合わせて家事や育児、あるいは学びの時間を設定できるはず」だ、とのこと。自宅で夜(深夜)、残った仕事を片付けるなど、労働時間を減らさずに働けるケースも多いでしょう。

★提言4:時短に限らず「フレックス勤務」を拡充し、若者の就労意欲減退を防げ

「結婚・出産すると、仕事上で“大損”する」

また、出産後の女性では、いわゆる「チャイルドペナルティ」問題も指摘されています。正規でも第一子の出産前後で「離職」する割合が、いまも2割に及びますが(’22年 リクルートワークス研究所調べ)、その多くは非正規でしか復職できず、所得が激減してしまうのです。

財務省 財務総合政策研究所の古村典洋氏による研究では、そうした所得減が、デンマークで3割程度に留まるのに対し、日本では約7割にものぼる、とのこと(’22年 同「Works」リクルートワークス研究所、12月発行号)。出産自体が、格差拡大に繋がる可能性も否めません。

賢いZ世代の若者たちは当然、こうした先輩の状況を見ています。もちろん、結婚や子育てにお金がかかることも把握していますが、先輩たちが結婚・出産によって、貴重な「時間」を奪われ、ひいては仕事への希望も奪われてしまう状況を、「先輩のようになりたくない」など、「逆ロールモデル」として職場で間近に見ているのです。

だからこそ、上の世代も真剣に、働き方の柔軟性を模索すべきではないでしょうか。