「非正規だと、結婚相手に迷惑がかかる」

働き方や女性の意識変化に詳しい、ジャーナリストの浜田敬子氏は、「カップルいずれかが非正規の場合、『結婚後に(生活費や時間の融通で)相手に迷惑をかけたくないから』と、結婚を躊躇している可能性がある」と指摘します。背後には、非正規の異性との結婚を望まない親からのプレッシャーもあるようだ、とも言います。

実際、女性でもその傾向がうかがえます。’22年の連合(日本労働組合総連合会)による調査では、同じ非正規(20~59歳)でも、初職が正規だった女性では、既婚率が6割強(63.6%)にのぼりますが、初めから非正規の女性では、既婚率が3割強(34.1%)と約3割も開きがありました(図表1)。つまり、女性も「非正規」で居続けることで、結婚への意欲や行動が減退したり、男性から選ばれにくくなっている可能性は否定できないでしょう。

【図表1】初職の正規・非正規による女性の結婚(初婚)・出産の状況
出所=『恋愛結婚の終焉

不本意非正規雇用は非正規のうち約1割

日本において非正規雇用者が急増した時期は、’99年の「労働者派遣法」の改正以降です。就業者全体に占める非正規割合は、’95年の21%が、’05年に33%と3人に1人となり、非正規人口も、’05年から’22年までに約1.3倍(1634万人→2101万人/約4割増)にまで増加しました(総務省「労働力調査」)。

非正規と書かれた新聞の見出し
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一部では「女性の働き方が、アルバイト・パートから正規へとシフトしている」との声もあります。確かに女性の間では、企業の「(正社員の)人手不足」などを背景に、コロナ前後(’19年→’22年)で正規が80万人増えていますが、いまもやむなく非正規を選択している人(不本意非正規雇用者)が、男性で103万人、女性でも107万人(非正規全体のうち約1割)存在するのも事実です。

浜田氏が指摘する通り、こうした状況が結婚意欲を削いでいるかもしれません。やはりリスキリングや、政府がここ数年力を入れる「求職者支援制度」「キャリアアップ助成金」の制度拡充などにより、非正規を「永遠の非正規」にしない取り組みは重要でしょう。