交通違反の取り締まりがそもそもいい加減だ
そもそも、日本の道路交通法の取り締まりには不可解な点が多すぎる。
たとえば、自動車の一時停止違反。交差点手前の一時停止線が、左右の見通しが悪い箇所に引かれている。警察は罠にかかる獲物を待つかのように、交差点から見えないところで、一時停止違反を厳しく取り締まっている。私の実体験だが、確実に一時停止してから交差点に進んだのにもかかわらず、警察官に車を止められたことがある。私が確実に止まったことを抗議すると、「よく見えなかった」と言い訳をしてきて、切符を切ることをあきらめた。
速度超過違反の取り締まりも、実態はかなり適当だ。以前知人から、「自動車やバイクの速度超過は、測定区間が200メートル以上ないと無効」と教えてもらったことがある。知人が言うには、速度超過違反の疑いでパトカーに車を止められたとき、警察官に「200メートルの証拠はあるか?」と聞くと、大概バツが悪そうに退散していくそうだ。
「制限速度のプラス15キロまでなら捕まらない」などと言ってスピードを出す人は少なくないだろうから、警察官は指摘すれば手軽に捕まえられると思っている。結局、警察官は点数稼ぎのために、自分のさじ加減で交通違反を取り締まっているのだ。取り締まるほうがいい加減なのだから、自転車やLUUPの利用者も交通ルールにいい加減だともいえる。まずは取り締まりのあり方を根本的に見直すべきだ。
23年7月、政府は物流の2024年問題――残業規制強化で引き起こされるドライバー不足――に対応するため、高速道路を走るトラックの制限速度を現行の時速80キロメートルから100キロメートルへ引き上げる方針を示した。安全のために設定される制限速度は、現場ごとの状況に合わせてルールが作られている。それなのに、こともあろうか安全性の検証を飛ばして、政治家の「鶴の一声」でルールを変えようとしているのだ。
トラックの制限速度の規制緩和は、経済産業省の猛プッシュがあった電動キックボード推進と情景が被る。
私は散歩を日課としている。いままではルール無視の自転車に脅かされてきたが、最近は電動キックボードにハッとすることが多い。このようなありさまなので、散歩にはクルマ通りの少ない狭い道を選ばざるをえない。同じような思いをしている人が、ほかにもたくさんいるはずだ。モビリティに関しては、第一に安全性を犠牲にしてはならないことを肝に銘じてほしい。