長年親しく付き合ってきた友人と決裂しやすい人

加齢とともに、人は無意識のうちに、この二分割思考に囚われてしまいます。

理由は、脳の前頭葉が縮んでいくからです。前頭葉が衰えてくると、物事の決めつけが激しくなり、白か黒か、善か悪かで考えるようになりやすいのです。

たとえば、長年親しく付き合ってきた友人でも、「小さな約束を破った」「ささいな金銭トラブルがあった」など、誤解や行き違いと呼べる細かなことで、「あいつは許せん。二度と会いたくない」と決裂しやすくなります。こうして、味方である人も敵と区別してしまうので、孤立しやすくなるのです。

また、二分割思考の人は、自分に対する考え方も厳しくなります。何事も完璧に成し遂げようとする、完璧主義者になりやくなるのです。

しかし、老いると完璧にできないことが増えていくため、「オレは、こんなにダメになってしまった」と落ち込みます。また、「完璧にできないことはしない」と、100かゼロかで物事を決めるようにもなります。

「限りなくグレーが広がっている」と考えられるか

二分割思考をする人は、思考の偏りが強いため、うつ病を発症しやすくなります。

しかも、その頑固さから、かかったら治りにくい、という傾向があります。

和田秀樹『65歳から始める和田式心の若返り』(幻冬舎)

ですから、心の老い支度をするにあたって、この二分割思考に陥らない思考法を身につけることが大切です。

そのためにも、新しい考え方をもう一つ足していきましょう。「曖昧さへの耐性」です。つまり、白と黒の間に、グレーの部分があることを認めていくのです。

ちなみに、ひと言でグレーといっても、白に近い色から黒に限りなく近い色まで、無限にあります。思考のグレーの度合いをその都度柔軟に変えていけることを、専門的には「認知的に成熟している」といいます。

たとえば、人と話すときに、「3割は自分と違う要素があるけれど、7割は同じ」と思えば、相手の言葉にいちいち腹を立てずに済みます。

また、「嫌なことをよくいうが、よいところもある人だ」と思えば、相手を敵視せずに済みます。自分のことも「この歳で3割、うまくできれば上々」と認められれば、できることが広がります。

人の思考は、年齢とともに成熟するのではなく、放っておくと老化します。グレーの部分を認めることは、大らかな気持ちを育み、心の成熟につながるでしょう。

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