コレステロール値が低いと寿命が縮む
私が、高齢者に「肉を食べましょう」と勧めると、多くの方から、「でも、コレステロールが心配なんです」と返ってきます。みなさん、コレステロールには善玉と悪玉があることなどもご存じなのですが、基本的に健康を蝕むものとして忌み嫌われているようです。
しかし、コレステロールは、私たちの体に必要なものなのです。おもに体内でつくられており、大切な役目を持っています。
70歳の高齢者を対象に15年間にわたって追跡調査した、東京都老人総合研究所(現・東京都健康長寿医療センター)の「小金井研究」によると、最も長生きするのは、男性ではコレステロール値が190〜219mg/dl、女性は220〜249mg/dlの正常よりやや高めのグループでした。
一方、コレステロール値が、男性では169mg/dl未満、女性では194mg/dl未満の低いグループが、いちばん死亡率が高かったことが明らかになっています。
このことから、コレステロール値が正常であることが長生きにつながるわけではなく、まして低いと明らかに寿命を縮めていたことがわかったのです。
コレステロール値が高い人ほどがんになりにくい
また、ハワイの住民に対する調査によると、コレステロール値が高くなると、心筋梗塞などの虚血性心疾患が少しずつ増加し、240mg/dlを超えると急増していました。ところが、コレステロール値が高い人ほどがんにかかりにくく、低い人ほどなりやすいことも判明したのです。
コレステロールが悪者として見られがちなのは、動脈硬化を促進し、心筋梗塞のリスクを高くするとされるためですが、コレステロール値が高いと本当に体全体に悪いのかどうかは、じつはよくわかっていないのです。
免疫学者には、コレステロール値が高いほうが長生きできると考える人が少なくありません。コレステロールは細胞膜を構成する重要な物質であり、免疫細胞にも必須であるのです。