「ワキ汗」と診断される6つのケース

ちなみに「ワキ汗」とよばれているワキの多汗症状は、「原発性腋窩多汗症げんぱつせいえきかたかんしょう」が正式名称で、これはエクリン腺からの汗によるものです。汗かき=原発性腋窩多汗症というわけではなく、診断基準があります。それが以下の6つで、このうち2つを満たす方に診断がつきます。

・最初に症状が出るのが25歳以下(つまり若い方の病気です)。
・左右対称性に汗をかく。
・睡眠中は汗が止まる。
・週に1回以上汗をたくさんかいて困るエピソードがある。
・家族歴がある。
・日常生活に支障をきたしている。

もしワキ汗に悩んでいる場合、内科の病気が隠れていることもあり得ます。代表的なのは甲状腺機能亢進症(バセドウ病)です。バセドウ病に伴うワキ汗の場合は「続発性腋窩多汗症」ということになり、バセドウ病の治療が必要です。どちらにしても多汗に悩んでいる方は、まずは皮膚科で診断を受けることをお勧めします。

また、ワキガについても皮膚科を受診していただきたいですが、先述した中学生が実際にワキガだったのかというと、あくまでも私の感覚では「そこまで気にすることはないのでは?」というレベルでした。

しかし、ニオイに対する感覚というのは非常に個人差があります。どんなにまわりが「気にならないですよ」「臭くないです」と言っても、ご本人やご両親はひどく気にされていて、切実に悩んでおられる場合も多いです。その一方で、まわりが気づいていても本人は気にしていないというケースもあります。

なぜワキ汗やワキガに関する相談が増えているのか

ワキ汗やワキガの有病率が増えているというデータはありませんが、それでもワキ汗やワキガに関する相談が増えた理由の一つに、ワキ汗やワキガが治療できることが世の中に認知されたことがあります。

ワキ汗の治療方法としては、まず塗り薬や飲み薬で発汗を抑える方法があります。塗り薬には「ソフピロニウム臭化物(商品名:エクロックゲル)」や「グリコピロニウムトシル酸塩水化物(商品名:ラピフォートワイプ)」、「塩化アルミニウム製剤」があります。

「エクロックゲル」や「ラピフォートワイプ」は汗を出すように指令する神経をブロックすることでエクリン汗腺からの発汗を抑制します。「塩化アルミニウム製剤」はエクリン汗腺の孔(汗孔)を塞ぐことで発汗を抑えます。いずれもエクリン汗腺からの多汗、ワキ汗には有効ですが、ワキガには効果はありません。

また飲み薬で保険適用になっているものに「プロパンテリン臭化物(商品名:プロバンサイン)」という内服薬があります。これも汗を出すように指令する神経をブロックすることでエクリン汗腺からの発汗を抑制しますが、副作用に目のかすみ・口の渇き・頭痛・眠気などがあったり、緑内障や前立腺肥大のある方は内服できなかったりします。またこうした塗り薬、飲み薬を使った治療は、ずっと使い続けなければ効果を得られません。