課長昇進で喜ぶ時代は終わった

今までは同期のライバルから頭一つリードすれば、年功序列で出世もできた。しかしこれからは同じ社内でも体一つ抜け出た同期が海外にゴロゴロいるという状況に変わる。日本のサラリーマン諸君はそこまで認識できているのだろうか?

同期の桜の一番乗りで課長になったと喜んでいられる時代はとっくに終わった。課長はその組織だけで通用する肩書であってスキルではない。他所の会社に行けばその効力は消え失せるし、ましてや海外に出ていけば何の意味も持たない。

日本の会社組織という同質化された社会に長居をして、体にこびりついてしまった考え方やスキル、ノウハウはなかなか転用が利かないし、発想も飛ばない。一大ブームとなったiPhoneやiPadをOEM生産する会社は、台湾の鴻海精密工業「ホン・ハイ」の子会社である中国のフォックスコンである。このように、“チャイワン”(中国と台湾の企業連携を示す合成語)が勃興して、日本のものづくりの習熟曲線を追い越す勢いだというのに、「もっといい一眼レフをつくる自信がある」とか「来年はモーターの回転数を1万8000回転まで上げてみせる」では何のセールスポイントにもならない。

カメラはミラーレスになって一眼レフの優位性は失われ、自動車は電気自動車(EV)になってエンジンは不要となる。近い将来、パソコンのデルモデル方式のごとく自分の好きなデザインのパーツを選んで組み合わせ、通販でクルマを買う時代がやってくるかもしれないのだ。

構想する力、分析する力、インテグレートする力……どこでも通用する、誰もが欲しがる、そして結果の出せるスキルや能力を戦略的に持たなければ、日本の企業の中でさえ生き残れない。

※すべて雑誌掲載当時

(小川 剛=構成 的野弘路=撮影 ロイター/AFLO=写真)