夫の不倫を上司に告げ口する妻

ケース1
〈年齢〉夫:50歳代後半 妻:50歳代後半
〈職業〉夫:会社員 妻:主婦
〈子ども〉二人:ともに20歳代で、すでに結婚
〈婚姻期間〉32年
〈背景〉家は妻の実家の敷地内に建てられており、ローンは完了
〈経緯〉夫から離婚の申立

夫は勤務先外の趣味のサークルで、ある女性と親しくなりました。相手女性は50歳代前半で、偶然、関連企業に勤務する独身の女性でした。一回の結婚ののち離婚し、自分の子ども一人はすでに結婚しています。夫の携帯電話を妻が見て、親しい内容のメールを目にして関係が発覚。妻が夫の会社へ出向いて夫の上司に、夫と相手女性の関係について相談しました。

さらに、妻は、夫の携帯電話を使って、サークルの幹部メンバーに自分はその女性と関係を持ったため、サークルを脱退するというメールを送ります。このサークルは文化系のサークルで夫は主宰者となっていて、文芸的な分野でも才能があり、メンバーをまとめたり、励まして引っ張っていくといった立場にあり、夫にとっては非常に重要な生きがいとなっていたものでした。

このメールの出来事によって夫は、家を出て賃貸マンションで生活を開始します。子どもたちは、母親から話を聞いて、父親を母親のもとへ引き戻そうと努力しますが、父親はそれに反発し、朝、女性宅から出勤するところを目撃されたりもします。

相手女性に500万円の慰謝料を請求

家庭裁判所へ夫が離婚を求める調停の申立をする以前に、妻はすでに夫の相手女性に対して、500万円の慰謝料を求める民事訴訟を地方裁判所へ提起しています。妻が夫に家庭か女性のいずれかを選択するように迫ったところ、夫は女性を選ぶと回答し、今回の申立に至っています。

家庭裁判所に離婚の調停が申し立てられる前に、当事者間で、また家族を交えて何度か話し合いがもたれ、激しい言葉の応酬がありました。とりわけ夫は、妻が会社へ出向いて夫の上司に「告げ口」をして対処を求めたり、サークルの幹部に勝手にメールを送りつけたりしたことに激怒しています。妻の行動は、会社での自分の信用を失わせたばかりではなく、自分が強い愛着を持ち中心的メンバーとして取り仕切ってきた文化サークルにおいて自分の顔を潰し、窮地に追い詰めたとして、激しい怒りを抱いています。

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妻は提訴した夫の相手女性に対する高額の損害賠償を求める民事訴訟を、家庭裁判所での家事調停と同時並行的に、地方裁判所で進めています。また、妻の側は、夫の離婚の申立に対して、婚姻費用の申立をしています。

夫の離婚の希望に対して、妻は夫の不貞行為を非難し、離婚は断固として拒否します。調停とは話し合いで合意をめざすものです。したがって相手が強く拒否し、話し合いに応じなかったり、あまりにも両者の主張が大きくかけ離れていて妥協の余地がないと考えられる場合、話し合いは不調で、不成立ということで調停は終了します。夫婦関係(離婚)の調停は、「不成立」で終了しました。

しかし、話し合いが不調なのでどうしようもないと言って放棄してしまうことができない種類の事件があります。これは、「養育費」や「婚姻費用分担」――「婚姻費用」または「婚費」と略称で呼ばれています――などです。