目指しているのは“ドラえもん”の世界?

フアンCEOがチャットGPT、その先に見据えるものは異なる。わたしたちは生成型などより演算能力の高いAIを搭載したデバイスに話しかける。質問やリクエストにデバイスが自律的に対応し、文書の作成、学習支援などを行う。ユーザーの声のトーンなどをAIが分析し、心理状況に配慮した情報の提供、行動を共にすることが実現するかもしれない。

フアンCEOは漫画の“ドラえもん”が現実になる世界を目指していると考えられる。自律的に演算し、移動する装置がわたしたちと共に行動する。困ったときに、デバイスに話しかける。デバイスはユーザーのニーズを理解し、シミュレーションなどを行う。

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それが実現すれば、わたしたちの生き方は劇的に変わるだろう。量子コンピューティング技術の向上も加わり、最適な生産プロセスの確立、より高い成果が期待できる学習方法などを実践する可能性は高まる。そうした期待の高まりが、決算発表後のエヌビディアの株価上昇を支えた。

エヌビディアが期待するのは日本企業の“強み”

今後の展開として、エヌビディアは生成型AI、さらに高性能なAI利用の増加を目指すだろう。そのために、同社は本邦企業との連携を強化する可能性が高い。2016年、エヌビディアは産業用ロボットメーカーのファナックとの協業を発表した。狙いは、わが国企業の強みである“すり合わせ技術”を活用し、最新のAIが搭載される高付加価値製品の創造につなげることだった。

エヌビディアは主にチップの設計、開発(ソフトウエア)に選択と集中を進めた。その上で同社は生成型AI向けのチップなど新規分野への参入を強化した。台湾のTSMCや聯發科技(メディアテック)はチップの製造を受託する。チップが収益を生むには、それが搭載される最終製品(ハードウエア)が欠かせない。

足許、わが国ではTSMCやサムスン電子、米インテルやマイクロンテクノロジーなどが直接投資を積み増した。地政学リスクへの対応に加え、超精密な半導体製造装置、極めて純度の高い半導体部材を製造する技術への要請も高まっている。エヌビディアが事業領域を拡大して需要を生み出すために、本邦企業の製造技術の重要性は高まるだろう。