酪農政策の転換が必要
農林水産省が行うべきなのは、輸入穀物依存の酪農から草地に立脚した酪農への転換である。
NASAは今後数十年の間にアメリカのコーンベルト地域でトウモロコシの生産が小麦に代わると予想している。さらに、国民の環境意識の高まり、アニマルウェルフェアへの対応、200~300%を超える乳製品関税の削減などを考えると、輸入飼料依存で牛舎飼いの酪農はいずれ維持できなくなる。
輸入飼料依存の酪農家にあえて対策を行うとすれば、希望する農家が、円滑に草地立脚型の酪農に転換するか、酪農業から退出できるようにするための産業調整政策である。このようなものとして、エネルギー流体革命により斜陽産業化した石炭産業対策、日米繊維交渉を受けての繊維産業対策、200海里導入による北洋減船対策、日米牛肉かんきつ交渉を受けてのミカンの伐採対策など、さまざまな対策が講じられてきた。
草地資源に立脚した酪農を維持振興するために必要な政策は、面積当たりの直接支払いである。食料安全保障も多面的機能も、農地資源を維持してこそ達成できる。そうであれば、農地面積確保のため、農業の種類にかかわらず、農地面積当たりいくらという単一の直接支払いを行えばよい。このような単一の直接支払いは、EUが長年の改革の末到達した農業保護の姿である。外国の真似をするなら、いい制度や政策を真似てはどうだろうか。