静岡県がJR東海に仕掛ける「嫌がらせ」

静岡県の懸念はデタラメであり、それはリニア計画を遅らせることだけが目的だ。「サイフォンの原理」と同様に“諸悪の根源”は川勝知事にあると筆者は繰り返し批判してきた。

ただ肝心のJR東海はそう断じるわけにはいかない。「山梨県の調査ボーリングをやめろ」がいくら理不尽な嫌がらせだとわかっていても、事業者のJR東海は許認可権限を持つ静岡県の懸念に誠実に答えなければならない。

そもそも南アルプスの地下約400メートル超の世界を科学的に解明することは現実的に不可能だ。

JR東海がいくら足が地に着いた説明をしても、専門部会の委員たちは科学的と称される反証や疑問を次から次へと呈する。県が委嘱した委員、つまり“御用学者”たちは、県の意向に沿った意見を述べているに過ぎない。

実際、「世界最大級の断層帯」が続く南アルプスのトンネル工事は、実際に掘って見なければ全くわからないほど不確実性が高い。不確実性を取り除くためには現地の調査ボーリングなどを重ねるしかない。それにもかかわらず、静岡県や川勝知事は、そうした調査すらJR東海にさせないと主張している。これでは一向に話が進むはずがない。

県専門部会で「たられば」の可能性、その懸念や疑問を持ち出して、事前に議論しても際限なく続くのはわかりきっている。県専門部会は川勝知事の意向に沿ってリニア計画を遅らせることだけを目的としているため、委員たちに社会的な常識を期待しても仕方ない。会議は踊り、遅々として進まない。

それが静岡県で行われているリニア議論の“正体”である。次から次へ無理難題を持ち出すから、リニア計画は静岡県でストップしたまま前に進まない。

山梨のボーリング調査をやめさせる権限は静岡県にはない

会議後の囲み取材で、筆者は静岡リニア問題の責任者である森貴志副知事に「静岡県はリニア計画推進の立場を表明しているのに、このような不毛な議論を続けることが行政として正しいのか?」と尋ねた。森副知事は「正しい」と答えた。

山梨県内の調査ボーリングをやめろという権限は静岡県にはない。だが、静岡県が地下水への懸念を口にすれば、JR東海は対応せざるを得ない。だから、単なる嫌がらせだったとしても、行政的には「正しい」ことになってしまう。

筆者撮影
静岡県庁で4月26日に開かれた、山梨県の調査ボーリングをテーマにした県専門部会

4月26日の県専門部会でも結論らしきものはなく、次回に持ち越された。中日新聞は『「山梨県の地下にある水は静岡県の水か」という議論に陥り、空転した』と書いた。このような空想科学の議論ならば永久に続いてもおかしくない。