公職選挙法は子育て中の母親仕様にできていない
現在の公職選挙法は、子育て中の女性の立候補を想定せずにつくられたもので、今の時代にはまったく合っていないのです。育児と選挙活動の両立を阻害するようなルールは、今すぐ見直しが必要でしょう。
議場でも、腰掛けるとスカートの中が見えてしまうような低い椅子をよく見かけますし、女性の肖像画もほとんど飾られていません。イギリス議会などでは肖像画を飾る際に女性議員の存在を可視化できるようルールを変えたり、男女同数の芸術家に依頼するなどの工夫をしています。先人の女性議員は貴重なロールモデルなのですから、日本の議場でもしっかり見せていくべきです。こうした男性仕様の環境も、女性議員が増えれば変わっていくのではないでしょうか。
3つ目はハラスメントです。これは男性に対してもありますが、女性に対しては特にセクハラがひどく、女性が政治参加するにあたって大きな障壁になっています。内閣府の調査によると、女性地方議員の約6割がハラスメントを経験し、3割弱が性的、もしくは暴力的な言葉による嫌がらせを受けています。
候補者の体を触ってくる悪質な「票ハラ」も
支援者や有権者から「票ハラ(投票ハラスメント)」を受けたという人もいますが、これは「当選させてあげる」「投票してあげる」などと言って候補者を個人的に誘う、性的発言をする、体を触るといった行為をするものです。なかにはストーカー被害に発展することもあります。候補者にとっては票を持っている有権者をむげにはできないので、その立場の弱さにつけ込んで悪質な行為をする人がいるのです。
近年、ようやく表面化してきましたが、まだ改善傾向にはなく、今後女性の議員や候補者が増えるにつれてもっと激しくなるのではないかと懸念しています。
悪質な行為は一部ですが、他方で、何気ない言葉に性差別が混じることは多く見受けられます。「女性は見た目がいいと票が取れる」といった具合です。世の中には「政治は男性のものであり、女性は入るべきではない」と思っている人や、ミソジニー(女性嫌悪、女性蔑視)を持つ人も一定数います。候補者を支える人々や政党はこの現実を知り、できる限りの対策をとっておくことが必要だと思います。
具体的には、ハラスメントの事例を選挙ボランティアなどの仲間同士で共有し、1人きりで有権者と相対させないようにする、信頼できる男性ボランティアに目を配ってもらう、無所属の人も利用できるハラスメントの相談窓口や対策ノウハウを得られる場を設けるといった対策が考えられます。また、現状は圧倒的に男性が多い「支え手側」に女性を増やし、皆で声を上げていく必要もあるでしょう。