「家族が壊されていく」という深刻な危険

これは当然の帰結で、「夫婦と子」世帯はやがて子が独立し、「夫婦のみ」世帯となり、夫婦のどちらか一方が先に亡くなればソロ世帯へと変わるためです。ソロ世帯とは、若い未婚世帯だけではなく、特に、地方においては、かつて家族だった高齢者によって作られていくからです。

それに加えて、ただでさえ婚姻減で、作られる新しい家族の数が少ない上に、「3組に1組は離婚する」という状態が続いており、「家族は作られず、壊されていく」ばかりです。

このままでは「家族が消滅する」という危機感もあるかもしれませんが、実はもっと深刻なのは、現状存在する家族が家族であるがゆえの呪縛によってその内側から瓦解がかいしていく危険性のほうなのです。

家族がいることは、幸福度を高める要素であることは間違いありません。事実、未婚より既婚のほうが幸福度は高くなります。家族がいることが心の支えにもなり、生活を充実させる原動力にもなるでしょう。いざという時、家族に頼れるから安心だというのもあります。しかし、「頼れる家族がいるから安心だ」ということだけに縛られるあまり、「頼れるのは家族しかいない」という心理に陥りがちなのも事実です。

「家族なんだから」という考えは呪いでもある

以前は、地域コミュニティが存在しました。しかし、今や大都市では、隣近所との付き合いはほとんどなくなっています。昭和時代は、職場が疑似的な地域コミュニティ的役割を果たしていましたが、今はその面影はなくなりつつあります。唯一の親密な関係性として残されたのが家族なのです。

「家族なんだから助け合うのが当たり前」という考えは呪いでもあります。助ける余力のある人はいいですが、余力もないのに「助けなきゃいけない」という言葉に縛られて無理をすれば、それはいずれ破綻する。自分だけではなく、助けたかった家族そのものを破壊してしまうことにもなります。

知らない人も多いですが、日本における殺人事件の約半分は親族殺人です。しかも、1997年時点39%だったその構成比は、2010年に52%となって以降、ほぼ平均的に50%前後で推移しています。日本は世界的にみても、殺人事件の少ない国ですが、数少ない発生件数の半分が家族間での殺人なのです。

しかも、残念ながら、今後も増えると予想されるのが、近年増加傾向にもある介護殺人です。親族間の殺人において一番多いのは、配偶者殺しで32%ですが、近年親殺しの比率が31%に上昇しています。