ストイックに取り組んだ日々

わが家は母と二人暮らしです。僕が「東大に行きたい」と言うと、母は驚くことなく、すんなり「頑張ってね」と敢えて選んだ「独学」を認めてくれました。母は、子供の頃から僕の意志を尊重してくれるタイプ。だからこのときも反対することはなかったです。

とはいえ僕は当時、舞台に打ち込んでいて、勉強に一生懸命取り組んだことも、塾に通ったこともありません。東大受験は途方もない目標だったと思います。

東大を目指す級友も、受験を指導してくれる先生もなく、力試しに受けた模試は当然のようにE判定。舞台活動は休止し、ネットや書店で受験の情報を収集して、何が最善かを考えました。東大を目指している他の人たちより後れを取っていることは明らかなので、同じように塾に通っても駄目だと思い、独学で高1の内容を学ぶことから始めました。

勉強は毎日、家で朝から晩まで。食事をするときも歯磨きの間も、頭の中は勉強一色です。不安でしたが、心の支えがありました。「ビリー・エリオット」のオーディションの思い出です。

撮影=キッチンミノル

このオーディションは1年以上にわたるワークショップの過程で、候補が少しずつ絞られていくというスタイルでしたが、周りがバレエやヒップホップなどに秀でた人たちばかりの中で、僕はダンスは習っていたものの突出したものがありませんでした。

でもどうしてもビリーをやりたかったので、ワークショップの日は毎回、3時間ほど前に会場に行って、それまで習ったことを復習したりと自主練しました。そのときのことを思うと、「これだけ努力したのだから、もうたいていのことは耐えられる」と思いました。

受験勉強で疲れたとき、そのときの感覚が蘇ってくる。そしてまだできると思えました。一度めちゃくちゃ頑張った経験は、次の頑張りのエンジンになるのですね。