「全力で誰から“守る”のか」

まだ平成の頃、あるテレビの討論番組に出演した時、それまで皇后陛下(当時は皇太子妃)へのバッシングを続けていた保守論壇の重鎮というべき方が、声を荒らげてこう言った。

「『全力で守る』とおっしゃるが、誰から“守る”のか? われわれ国民に敵対するような表現ではないか」と。

私は悲しい気持ちになり、とっさに反論した。

「皇太子殿下(今の天皇陛下)にとって身近な母宮でいらっしゃる皇后陛下(今の上皇后陛下)が、皇室に嫁がれてどれだけおつらいご経験をしてこられたか。それを誰よりもよくご存じの皇太子殿下ならば、『全力でお守りします』というのは、お相手を真剣に愛しておられたら当然に出てくるおことばではないですか」と。

上皇后陛下が皇太子妃時代にさまざまな悲しいご経験をしてこられた事実は、比較的よく知られているだろう。

平成に入って、皇后になられてからも、週刊誌などによるバッシングが繰り返された。それが高じて、遂にバッシングへの義憤に駆り立てられた人物によって、週刊誌を出している出版社の社長宅に銃弾が撃ち込まれるという、皇室の方々が最も悲しまれる事件まで引き起こされてしまった。

海外メディアが驚いた皇室バッシング

今の皇后陛下も、皇太子妃時代に執拗しつようなバッシングが続いた事実は、人々の記憶に刻まれているはずだ。果ては幼い敬宮殿下についてまで、悪意があるとしか思えないような記事も書かれた。その他に、宮内庁内部にも皇后陛下のご病気への無理解という問題があった。

天皇陛下はご約束通り「全力で守る」というご姿勢を、さまざまな逆風の中でも誠実に貫いてこられた。皇后陛下にとって、これほど心強い支えはなかっただろう。

私が海外のメディアから取材を受けるたびに、彼らがこうした現象を不思議に思っていることを感じる。

「私たちは日本人の多くが皇室に敬愛の念を抱いていると思っています。また日本人が心優しい国民だというイメージも持っています。さらに他の王室と比べて、日本の皇室にそれほど大きな落ち度があるとも思えません。なのになぜこうした人権無視の残酷なバッシングが繰り返されるのですか?」と。

SNS活用をめぐる天皇陛下と秋篠宮さまの温度差

そうした皇室バッシングへの対応策という性格も持つ、SNSの活用を宮内庁が検討していることへも、記者から質問があった。これに対する天皇陛下のお答えは、昨年の秋篠宮殿下の記者会見でのご発言と、ある意味ではコントラストをなす内容だった。

秋篠宮殿下のご発言は、SNSの導入にいささか前のめりで、かつ失礼ながら「技術論」に傾いた印象が強かった。これに対し、天皇陛下は「天皇・皇室はいかなる存在であるべきか」という原理・原則に立ち返って、重厚かつ慎重なご姿勢を示された。

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