必要なのは「自治体トップが腹をくくること」
私が大学生のころ論文に書いたときでも、子ども予算は先進国の半分、公共事業は倍でしたから、今も傾向はあまり変わっていません。公共事業費は上位に入るのに、子どもへの支出は低いままです。日本は災害の多い国なので、国土が狭くてもインフラにある程度投資するのは理解できます。それでも少し多すぎではないでしょうか。諸外国に比べ、いまだに子どもに冷たすぎる日本。状況はさらに悪化しています。
明石市では、過剰な公共事業費を適正化し、子ども予算を倍増しました。事業を見直した結果、諸外国並みの予算配分に変えたことで、グローバルスタンダードな施策を次々に展開できるまでになってきました。
権限を持っている各自治体のトップが、それぞれ腹をくくりさえすれば、変えることができます。本当は、どこのまちだってできることなのです。決して難しいことではありません。
もちろん国でも。変えることなんて、決断さえすればやれることです。
まず見るべきは「役所や議会よりも市民」
自治体のトップには、大きな権限があります。
とりわけ「政策の方針決定権」「予算編成権」「人事権」の3つは特に重要で、まちづくりを大きく左右する強力な権限です。
これらを適正に使えているか。それは、「自治体のトップとして働いていると言えるのか」とほぼ同じくらい、大きな意味を持っています。
たとえば予算を配分し、事業に予算を「つける」か「つけない」かは、トップの判断だけで決めることが可能です。議会は予算を「つける」ことができません。選挙で別々に選ばれ、役割が違うのです。
実際の予算の「執行」には、議会の承認が必要です。否決されることもあります。ですが、市長が事業に予算をつけなければ、それで削減が決まります。元には戻せないのです。
ですから、抵抗にも遭い、恨まれもします。市長になって初の予算案は、議会で通りませんでした。否決されたあと、全会一致で「市長に議会軽視の反省を求める決議」を出され、こちらは議決されたのです。
それでも、議会対策より大切なのは、市民との約束です。公約だけは果たしたい。これらの権限を私は市民のために行使していきました。
下水道の600億円を150億円にすることも、市長が決めた瞬間に450億円削減で終わりです。それを復活することはできません。
それを関係者は、とにかく許せないのです。これまで何十年と金をもらっていたところから突然もらえなくなる。その怒りは半端ではありません。