「特効薬」が存在しない

【彦】じゃあ、そのあいだはどうすればいいのさ?

栗下直也、ニューズウィーク日本版編集部『くらしから世界がわかる 13歳からのニューズウィーク』(CCCメディアハウス)

【ジョンソン】温暖化には「特効薬」がないんです。病気の場合、特効薬が見つかれば、治ります。ワクチンが開発されれば罹りにくくなります。しかし、温暖化の場合、いまのところ、一発で改善できる叡智を人類は持ち合わせていません。温暖化は誰か偉い人が一夜にして止めることも、薬で治すこともできないんですね。

【彦】人類にとって温暖化は、今世紀かけても解決できない「不治の病」になるかもしれないんだね。

【うめ】そんなうまいこといわないでいいから! 「温暖化は仕方がない」と人任せにしないで、自分のこととして考えることからはじめなさい。

【ジョンソン】そのとおりですね。みなさんの豊かな地球を守っていくには、ローマは1日にしてなりません。

【うめ】みなさんって……、あなた、まるで宇宙人みたいないいかたねえ。

【彦】それに、ローマは「なる」までに700年もかかったしな。

【ジョンソン】うっ……。あ、では、似た意味で「塵も積もれば山となる」ということわざはどうでしょう。ワタクシの好きな日本語です。

「昔の人が暑さに強かった」わけではない

「暑い暑いと文句ばかりいって、最近の若者は根性が足りない」と怒っているおじいさんをみなさんは見かけたことがあるかもしれません。でも、昔もいまも、若者は大して変わりません。たとえば、1926年(大正15年)は歴史的な猛暑でした。『昔はよかった病』(パオロ・マッツァリーノ、新潮新書)によると群馬県では5月の時点で小学生15人が倒れたと記録されています。いまならば大変なニュースです。

15人が倒れる暑さとはどのくらいの暑さだったのでしょうか。そもそも、猛暑と聞くと、みなさんは何℃を想像しますか。35℃くらいでしょうか。低くても32~33℃くらいのイメージでしょうか。気象庁は2007年に、最高気温が35℃以上の日を猛暑日と定めました。ところが、この1926年の「猛暑」、実は27℃でした。みなさんが「暑い、暑い」といいたくなるのは、昔の子どもより根性がないためではなく、単純にいまのほうが暑いのです。

イラスト=徳永明子
栗下直也、ニューズウィーク日本版編集部『くらしから世界がわかる 13歳からのニューズウィーク』(CCCメディアハウス)より